2007年06月27日

神社

 その神社にお参りしだしてから、もう半年になる。願掛けすることがあって行ったのが最初で、そのうち行かないと落ち着かなくなり、今では行くのが日課になっている。

 一ヶ月前ぐらいだったろうか、お参りを終えて帰ろうとすると、突然後ろの方から、
「明日も来いよ」
 という声が聞こえた。びっくりして振り向くと、木々が揺れてサワサワと鳴っていた。

『ああ、ここの神様は、いつも気にかけてくれたんだ』

 それ以来神様とぼくは友だちになった。ぼくが語りかけると神様は、神殿の奥から幽かな風を吹かせ、応えてくれている。
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2007年07月11日

街に小さな風が吹いていた。
その時、何がどうなんだと、
酔っ払いの騒ぐ声が聞こえた。

酔っ払いは道行く人に向かって、
つばを飛ばし、身振り手振りで
支離滅裂な持論を展開していた。

予告なしの演説会は、
聞く人もいなければ、
振り向く人もいない。

それでも酔っ払いは、
声を詰まらせ、涙を流し、
懸命に演説をし続けた。

そして最後に酔っ払いは、
「天皇陛下万歳!」と叫んで、
演説のすべてを終わらせた。

一世一代の舞台を終えた酔っ払いは、
そのままその場に寝転がり、
ホッとした顔で眠ってしまった。

よほど緊張していたのか、
ビルの壁に映るその影は、
風よりもいくぶん速く揺れていた。
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2007年07月14日

顔、顔、顔

小学校の前に貼り出された
いくつもの顔、顔、顔
だーれも知らん。
名前も知らん。
何をやってる人ですか?
何を目指す人ですか?
そんなことを聞こうとすると、
強い雨が降り出して、
顔、顔、顔を叩きつける。
台風が近づいているらしい。
小学校の前の顔、顔、顔が、
やけに険しく見えるのは
そのせいかもしれないな。
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2007年07月29日

夏の一コマ

トンボが飛行機を背負って飛んでいる。
飛行機はあまりに大きすぎて、
その存在はわからない。
だけどトンボは飛んでいる。
飛行機を背負って飛んでいる。

飛行機がトンボに背負われて飛んでいる。
トンボはあまりに小さすぎて、
その存在はわからない。
だけど飛行機は飛んでいる。
トンボに背負われて飛んでいる。
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2007年08月12日

きんきら姉ちゃん

きんきら姉ちゃんが睫毛を揺らす
髪を金色に染め上げて、
化粧を厚く塗りたくり、
においのきつい香水つけて、
短いスカート腰に巻き、
サンダルのように靴をはき、
怒ったような顔をして、
やたら大きな声を出す
きんきら姉ちゃんが睫毛を揺らす
一本はみ出た睫毛を揺らす
時代ですなと人が笑う
時代なのかとぼくも笑う
posted by 新谷勝老 at 14:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 街風景 | 編集

2007年08月19日

最近は星がよく見える。
物心ついた頃から、
あまり星を見た記憶がないのだが、
最近はやたらと星に目が行く。
空がきれいになったのも確かだが、
どうやら、
星を気にする歳になったらしい。
本当に星がよく見える。
posted by 新谷勝老 at 14:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 街風景 | 編集

2007年09月16日

夜に鳴く虫

夜に鳴く虫にはいろいろと、
言葉があって面白いものだと、
耳を澄まして聴いてみれば、
驚いたことにみな、
人の悪口ばかり言いあっている。
あいつがどうだの、
彼がどうしただの。
そんなに口調は酷くはないが、
その内容には心乱れる。
今宵も悪口が街に響いている。
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2007年09月17日

大盛況

スーパーマーケットの駐車場に車を置いて、
ドラッグストアに牛乳とパンを買いに行く。
ドラッグストアで牛乳とパンを買ったあと、
ホームセンターに栄養ドリンクを買いに行く。
ホームセンターで栄養ドリンクを買ったあと、
スーパーマーケットの駐車場まで戻る。

ドラッグストアとホームセンターの
チラシが入った日、
スーパーマーケットの駐車場は大盛況だ。
posted by 新谷勝老 at 14:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 街風景 | 編集

2007年11月19日

星のきれいな夜

店に入ったのが11時だったから
もう電車は走ってないだろう
タクシー代は持ち合わせてないし
こうなったら家まで
歩いて帰ることにしよう

ここから家まではけっこう距離があって
休まずに歩いても2時間はかかる
ところが今日は酒がしこたま入ってるし
早くて3時間というところだろうか
足がふらついて目もうつろだ

そういえばあれはいつだったろうか
パチンコで有り金全部すってしまい
今日と同じように歩いて帰ったことがある
どこかに金は落ちてないかと
下を向いて歩いていったんだった

だけど下を向いて帰るなんて
今日はとても出来そうにない
ただでさえ気分がよくないんだから
下を向いて歩いてなんかいたら
いつか潰れてしまうだろう

それにしても今日は星がきれいだ
寒さのせいで空気が澄んでいるんだろう
こんなきれいな星が見れるなんて
この街にもまだまだ未来が残っている
と、感心しながら歩いていく
posted by 新谷勝老 at 20:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 街風景 | 編集

2007年12月02日

世の中が
寒さの中で動いている。
騒音、騒音
ここにはもう人間の会話はなく
ひと時の暖かみもない。
右から左、
左から右、
通り過ぎるものはみな
文明の枠でしか呼吸をしてない。
さて、
そこに飛び込むことが尊いのか、
そこから逃れることが尊いのか、
この季節は答をまだ
凍結させている。
posted by 新谷勝老 at 20:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 街風景 | 編集

2008年01月06日

正月模様

昔は七日まで「おめでとう」でした。
今じゃ三日で「こんにちは」です。
別に体制が変わったわけではないのです。
人の気持ちが変わったわけでもありません。
誰もがゆっくりしたいのです。
酒でも飲んでいたいのです。
実は欲に目のくらんだ商売人たちが、
手を変え品を変え、
人の心を煽っては、
正月模様を変えていったのです。
奴らに煽られた善人たちは、
次第に平静を失って、
かくて正月は気ぜわしいものに
なってしまったわけなのです。
昔は七日まで「おめでとう」でした。
今じゃ三日で「こんにちは」です。
posted by 新谷勝老 at 22:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 街風景 | 編集

2008年01月30日

ぶらぶらぶらぶら

ぶらぶらぶらぶら
ぶらぶらぶらぶら
目の前を歩いていく人人人
落ち着ける場所なのに
せわしなく体を揺すって
落ち着きに来ているのに
なぜか往ったり来たりして
ぶらぶらぶらぶら
手ぶらで歩く
ぶらぶらぶらぶら
臆面もなく歩く
posted by 新谷勝老 at 23:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 街風景 | 編集

2008年02月04日

春が来たんじゃない。
ぼくらが春になったんだ。
木の芽が出るように、
虫たちが這い出すように、
ぼくらが春になったんだ。
posted by 新谷勝老 at 23:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 街風景 | 編集

2008年12月03日

廃れた街を歩いてきた

とりあえず今日、
廃れた街を歩いてきた。
これまでのぼくの歴史というか思い出が、
その場所その場所にいくつも転がっていて、
それが何とも愛おしいものに感じたのだった。
すべては過ぎ去った時間の中にあるのだが、
その時間は心をそこに遊ばせる自由を与えてくれた。
posted by 新谷勝老 at 23:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 街風景 | 編集

2009年01月27日

さっきから雪が降っている
寒空に立つ露天風呂の湯気を
一気に掃いたような白い雪が
こちらに向かって飛んでくる
ぞぞぞ、ぞぞぞ、
ぞぞぞ、ぞぞぞ、
ぼくはかじかんだ手で
中途半端に痛い腹を押さえた
posted by 新谷勝老 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 街風景 | 編集


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