2001年04月01日

酔っ払いのおいちゃん

最近酔っ払いのおいちゃんが頻繁にやってくる。
最初はいろんな人に絡んでいるだけだったのだが、最近は押売りもやっている。
山で芋や筍を掘ってきたと言っては、勝手な値段をつけて売っている。
酔っ払っているもんだから、時々大声を出して脅している。
立派な押売りである。

今日うちの女の子に筍を1000円で売ると約束していた、と筍が2つ入った袋を下げてやってきた。
たまたまその子が食事中だった。
売場に居座って、「どこに行ったんか?」とか「だましたんか?」とか言って吼えていた。
誰もまともに相手をしなかったので、頭にきたのか筍の入った袋の中に痰を吐いていた。
そして「この筍は、いい筍ぞ!」と、袋の中から筍を一本取り出した。
その筍にはさっき吐いた痰がベットリ付いていた。
結局店長がなだめて帰らせたが、閉店前にもう一度やってきた。
ぼくに「大将!」とか言って、大声で口汚いことを罵っていた。
ぼくが「いくら酔っとうからといって、そんなことを言うたらいけんやろ!」と怒鳴ると、「すいません」と言って話題を変えた。
きっと小心者なんだろう。
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2001年05月13日

酔っ払いのおいちゃんが来た

今日閉店前に、またあの酔っ払いのおいちゃんが来ました。
今日は筍が3本売れたそうで、上機嫌でした。
あまり酒は飲んでなかったけれど、相変わらず大声を出していました。
ちょうどテレビで野球をやっていたのですが、「今日西武はどうでしたか?私は西武が好きでねえ。どうもダイエーは好きになれんですたい。巨人も長嶋が好かんですけねえ」などと言っていた。
ぼくは今日ホークスが延長負けしたこともあって、イライラしていた。
そしておいちゃんに向かって「巨人の悪口は言うてもいいけど、おれの前でホークスの悪口を言わんでくれんね。」とちょっと語気を強めて言うと、おいちゃんは話をそらした。
そして、「大将お疲れ様でした」と退散していった。
相変わらず小心者である。
弱い奴ほど大きな声を出すものだ。そしてよく吼える。
あのおいちゃんを見ていると、それがよくわかります。

さて、今日から閉店準備の時に階段の上り下りを始めました。
だいたい5分ぐらいだから疲れない。
それでも今日は息があがっていました。
何度も言うようですが、1ヵ月後を楽しみにしておいて下さい。
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2001年05月16日

おいちゃん、警察に連行される

酔っ払いおいちゃんの話である。
夕方の5時半頃に現れ、床に座り込み相撲を観戦していた。
再三そこに座るなと、スキップさんに注意されていたが、知らん顔であった。
ぼくがおいちゃんの側によってみると、タバコの灰が落ちていた。
「おいちゃん、ここでタバコ吸うたらいけんち言うたやろ!」
おいちゃんはかなり飲んでいたのだろう。真っ赤な顔をして「消した」とひとこと、あとは知らん顔をした。
ぼくは『相撲が終わったら帰るだろう』と思い、倉庫に行った。
ぼくが用を終えて売場に戻ってみると、店長が店の外に連れ出したということで、もうおいちゃんはいなかった。
おいちゃんが座ったところを見てみると、タバコの吸殻と吐いた痰があった。

それからしばらくして、仕事を終えたスキップさんが売場に戻ってきて、「おいちゃん、入り口の前で寝とるよ」と言った。
入り口に行ってみると、おいちゃんは地べたに横になって寝ていた。
「おいちゃん、おいちゃん」とぼくは起こした。
おいちゃんはちょっと目を開けたが、また寝てしまった。
何人かのお客さんがこちらを見ていた。
スキップさんは「倒れたんかもしれん。救急車呼ぼうか?」と言った。
ぼくが「今、目を開けたけ大丈夫。酔いで寝とるだけよ」と言うと、こちらを見ていたお客さんたちは「なーんか」と言って店の中に入っていった。ぼくも売場に戻った。
それから何度か見に行ったが、おいちゃんはまだ寝ている。
明らかに寝ている。さっきと寝相が違うのだ。
7時前ぐらいだったか、ぼくはまたおいちゃんを起こした。
「おいちゃん、おいちゃん」と揺さぶってみた。
それでも起きないので、ちょっと蹴りを入れた。
おいちゃんは目を覚まし、「なんか、こらあ。文句あるんかあ」とすごんだ。
ぼくが「誰に言いよるんね」と大声で言うと、一瞬顔色が変わった。
そして、ぼくとわかると「あ、相撲はどうなりましたな」と言った。
「相撲なんか知らんよ。それより暗くなるけ、早よ帰り」とぼくは言ったが、相変わらずおいちゃんは知らん顔をしていた。
それから10分ほどして、警察がやってきた。店長が呼んだらしい。
おいちゃんは暴れていたが、パトカーに乗せられてしまった。
営業妨害や迷惑条例に引っかかることばかりやっているけど、酔いが覚めたら釈放されるだろう。
気の小さいおいちゃんだから、酔いが覚めたら、きっと真っ青になるはずだ。
posted by 新谷雅老 at 18:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 酔っ払いブギ | 編集

2001年05月30日

酔っ払いのおいちゃんと神様

一日中雨が降っています。
今日は客数も少なく、暇な一日でした。
こんな日にも必ずやってくるのが、酔っ払いのおいちゃんです。
出入り禁止にされたにもかかわらず、性懲りもなく店に現れて講釈をたれている。
相変わらず店の中に痰を吐くし、昨日はたばこ銭を見知らぬ人にたかっていたらしいし。
何が楽しくて来るのかわからないけど、もういいかげんにしてくれという感じです。
聞いた話だが、このおいちゃんが川べりで寝ている(どこででも寝る)のを見た通行人が、倒れていると勘違いして救急車を呼んだらしい。
その時は連れて行かれたかどうかはわからないが、一度連れて行って入院させてほしいものだ。
そしてアル中を治してもらいたい。
酒を断てば、あのおいちゃんも人の迷惑というものを考えるようになるだろう。

昨日神様の話をしたが、ぼくは神様とは時間を施すものだと思っている。
よくあるでしょう、事故なんかに遭った時「あと1秒早くここを通り過ぎていれば、こんな事故に遭わずにすんだのに」ということが。
すべての事象は巡り合わせ(因縁)だといわれているけど、その巡り合わせは、時間の配剤にあるんです。
その時間を配剤する主催者こそが神様なんです。
事象(結果)が運命なら、神様が運命を司っていることになるでしょう。
だからぼくは、流れを大切にしているんです。
肩に力をいれずに生きることをね。
神様に逆らったって何の得もありませんからね。
時間を狂わされるだけ損ですよ。
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2001年08月01日

暑い!

暑い!
こう暑いと勘や思考能力がなくなってしまう。
最近、日記のネタに詰まっている。
パソコンを前にすると何も考えられなくなるのだ。
「今日何があっただろうか?」とか「何か面白いニュ-スはないだろうか?」とかいろいろ考えたりニュースを見たりしているのだが、「おっ」と思うようなことがあったとしても、思考がついてこないので話が広がらない。
仕事中にも、例えばタバコを吸っている時に、「今日の日記は何を書こうか?」などと思っているのだが、「そのうち何かあるだろう」というところに落ち着いて、その後も気にはしているのだが、結局答が出てこない。
その原因はすべて、暑い! に尽きる。
でも、そう毎日ネタは転がってないよね。

ということで、今日もくだらないことを書きます。
この間の月曜日に、あの酔っ払いのおいちゃんが騒ぎを起こしたらしいのだ。
うちの店の敷地内に噴水があるのだが、そこであのおいちゃんが水浴びをしていたらしいのだ。
それも真っ裸で。
そのあと、うどん屋の前でパンツ一枚で昼寝をしていたとか。
とうとう、このおいちゃんも酒と暑さでおかしくなったか?
店長は「もう勘弁してくれ」とこぼしていたらしい。

それにしても、ぼくはこのおいちゃんが羨ましい。
このおいちゃんこそ、何事にも縛られない、まったくの自由人なんだろう。
人目をまったく気にしてないし、店から追い出されたり警察に連行されたりしても、へとも思わずに舞い戻ってくるし。
好き勝手なことをやっているし、嫌なことははっきりと嫌と言っているし。
ぼくもこのおいちゃんを理想として生きてみようかなあ。
posted by 新谷雅老 at 16:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 酔っ払いブギ | 編集

2002年02月12日

変な客 その2

金曜日、またしても電話である。
ぼくが「今度は何ですか?」と訊くと、お客は「お前、騙しやがったな」と言う。
し「何かお客さんを騙すようなことをしましたかねえ」
客「お前、この間芯を替えてないやろうが!」
し「ちゃんと替えましたよ」
客「替えてない!」
し「何が替えてないですか。替えた本人が替えたと言っているんですよ」
客「じゃあ、何でストーブが点かんとか!?おれはチャッカマンで点けたんぞ!」
し「点火プラグか灯油が悪いんじゃないですか?芯はちゃんと替えましたから。チャッカマンででも火が点くのなら、芯は悪くないです!」
客「替えてない」
し「いい加減にして下さい。いちゃもんつけてるんですか!?」
客「何かその口の利き方は!」
し「人をうそつき呼ばわりするからですよ」
客「とにかく、つかんのやけ見に来い!」
し「すぐ行きますから、待っとって下さい!」
ぼくは受話器を叩きつけて切った。

ちょうど配達の人がいたので、一緒に行ってもらうことにした。
行ってみると、お客はベッドに潜り込んでいた。
50代くらいの男性だった。
ストーブが消えたままになっていたので、ぼくが「ストーブを点けてみていいですか?」と訊くと、お客は「ああ」と答えた。
点火ヒーターはちゃんと点いている。
ヒーターを芯に押さえつけてみると、少し煙が出てきた。
そこで、ちょっと力を抜いてやると、火は点いた。
し「お客さん、ちゃんと点きますよ」
客「さっきまで点けとったけよ」
し「でも、電話では全然点かんと言ってましたよねえ」
客「・・・」
何度もやってみたが、火はちゃんと点く。
し「何度やっても点きますけど、どういう点け方してるんですか?」
お客はずっとベッドにこもったままで、ぼくと向き合おうとしない。
こちらが質問すると、たまに顔を出すだけだった。

このままそこにいても埒が明かないので、とりあえず電池だけ交換して、「別に問題ないです」と言って帰ろうとしたら、やっとお客は口を開いた。
「灯油が悪いことも考えられますか?」と言う。
し「ストーブの故障の原因は、ほとんど灯油です」
客「じゃあ、スタンドに行って文句言ってこよう」
し「文句言っても、スタンドは『自分のところは悪くない』、と言って認めませんよ」
客「そうですねえ」
し「今回は灯油も悪くなかったみたいだし、しばらく様子を見てください」
そう言って、ぼくはお客の家を出た。
結局、お客はベッドの中から出てこなかった。
おそらく、ぼくが電話で怒鳴ったので怖かったんだろう。

昨日の話。
閉店前に、夏によくこの日記に登場した、酔っ払いのおいちゃんが現れた。
泥酔状態である。
かかわると面倒なので、ぼくはちょっと距離を置いてこのおいちゃんを見張っていた。
すると、おいちゃんはテレビの前に座り込み、タバコを吸おうとして火を点けた。
もちろん店内禁煙である。
ぼくは慌てておいちゃんに駆け寄り、「おいちゃん、何回言うたらわかるんね。ここは禁煙やろ!」と言った。
おいちゃんは「ちゃんと消しますけ」と言って、火の点いたタバコを床に捨てようとした。
ぼくは頭に来て、「いい加減にしとけよ。帰れ!!」と言い、おいちゃんの手からタバコを取り上げ、腕を取り、店の外に引っぱって行った。
おいちゃんは「何かコラァー」と大声で凄んだ。
ぼくは、さらに大きな声で「『コラァー!』ちゃ、誰に言いよるんか!!」と怒鳴った。
そして「ここなら何ぼ吸ってもいいよ」、と取り上げたタバコを返そうとすると、おいちゃんは「いらん!」と言う。
ぼくは「何が『いらん』ね。あんたのタバコやろ。吸い」と言って、タバコをおいちゃんの口に無理やり差し込んだ。
おいちゃんはしぶしぶタバコを吸い始めた。
ぼくが「おいちゃん、いい加減にしとかんと警察呼ぶばい」と言うと、おいちゃんは下を向いて「いや、何も悪いことはしてません」と小さな声で言った。
ぼくは「今度は警察やけね。わかったね」と言って売り場に戻った。

最近、まともなお客が減って、こんな客ばかりが来る。
ホント疲れます。
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2002年06月28日

ある新聞記事より

“「雨の日のVIP」
雨がシトシトと降る夜は、戸畑署員の不安の日だ。60歳くらいの男性が決まってやって来て、当直員を困らせるからだ。
署員によると男性は日雇い労働者らしい。
だが、最近は仕事がなく戸畑の街を自転車に乗り夜の寝床を探しているという。戸畑署に現れると酔っ払った上に死んだふりをして居座る。そして保護室で朝を迎える。彼にとっては警察署が格好のホテルとなる。
実は、男性は根気が必要な山芋掘りの名人。金が尽きると山で長さ1メートルはある自生の山芋を掘り、料亭と1本1万円で取引する。
「どこか彼の働く場所はないのかな。山芋を掘る根気で頑張ってくれれば」と、署の幹部は雨雲を恨めしそうに見上げている。”
 (6月26日付毎日新聞朝刊より)

この記事を読んで、ぼくは「ふざけるな!」と思った。
この『60歳くらいの男性』とは、ぼくがこの日記で再三紹介している、酔っ払いのおいちゃんのことである。

ぼくが何に対して「ふざけるな!」と思ったか?
別に、こののんきな記事に対してではない。
それは警察の態度に対してだ。
何が、雨の降る夜が不安、だ!
そちらは雨の日だけじゃないか。
こちらは、一時期、毎日のようにこのおいちゃんに泣かされたんだぞ。
このおいちゃんから、怒鳴られたり、凄まれたり、叩かれたりしたお客さんのことを考えて言っているのか!?
売り場に来ては、クダをまき、タバコの吸殻を捨て、痰を吐き、どれだけ迷惑したと思っているんだ。
困ってあんたたちを呼べば、厄介そうな顔をするし。
こちらのほうが数倍恨めしい気持ちになるわい。

こんな警察の情けなさを見せつけられると、「おいちゃん、もっとやってやれ」という気持ちになる。
しかし、「死んだふり」をするとは笑わしてくれる。
おいちゃんはタヌキか? はたまたマル虫か?
そういう時、警察はどう対処しているんだろうか。
以前、店の前で倒れたように眠っていた時は、ぼくは蹴りを入れてやったのだが、まさか警察はそこまでしないだろう。
おそらく、「もしもし、どうされましたか?」などと言っているのだろう。
そんな甘っちょろいことで、このおいちゃんを退散させられるわけがない。
時には怒鳴って追い出すくらいのことをしないと、このおいちゃんは付け上がるばかりだ。

それにしても、あのおいちゃんが「山芋掘りの名人」だとは。
確かにそうかも知らないけど、後がいかん。
ビニール袋にその日の収穫を入れて売り歩いているのだが、売り方がひどい。
まるで押し売りである。
しつこく相手に絡み付いて、無理やり売りつけているのだ。
断られると、因縁をつけている。
あげくのはてには、そのビニールの中に痰を吐いている。
そして、またそれを別の人に売りつけている。
その料亭も、無理やり売りつけられた口だろう。

まあ、毎日新聞の記者さんも、暇だからこんなこと記事を書いたのだろうが、その背景まで調べてほしかった。
調べていくうちに、その60代男性のことを書いたサイトがある、ということまでわかったかもしれない。
そうすれば、『頑張る40代!』の宣伝にもなっただろうに。
残念!
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2002年07月03日

この時期になると

先日、酔っ払いおいちゃんが新聞で紹介されていた話を書いたが、あの記事のことが酔っ払いおいちゃんの耳に入ったらしく、おいちゃんはそれに気をよくし、有名人を気取るようになったということだ。
「私のことが新聞に書かれてましてねえ」などと言っているらしいのだ。
どうも『山芋掘りの名人』と書かれていたのが、いたく気に入っているようだ。

今日もおいちゃんを見かけたが、どういうわけか普段着ている作業着姿ではなく、カジュアルっぽい服を着ていた。
おいちゃんが店に来るようになって2年、初めて見る格好であった。

おいちゃんは、あの記事が『山芋掘りの名人』を褒め称える記事だとでも思っているのだろうか?
確かに『根気が必要な山芋掘りの名人』と、おいちゃんを立てている部分はある。
しかし、あの記事の主役は戸畑署の署員であって、おいちゃんではない。
先日ここにイタチのことを書いたが、おいちゃんの記事はその話によく似ている。
夜な夜な店に侵入しては、センサーに触れ、糞尿を撒き散らし、警備会社や我々店の人間はそのために右往左往している。
この場合の主役は、あくまでも迷惑をこうむっている我々のほうであり、決してイタチではない。
新聞記事の中のおいちゃんは、店内を荒らすイタチのような立場で書かれているに過ぎない。
決して、「『山芋掘りの名人』警察に現れ大活躍!」というものではなかった。
そのことを教えてやらないと、おいちゃんはまた調子に乗るだろう。

考えてみると、昨年もそうだったが、この日記は夏になると生き物や酔っ払いおいちゃんの話題がよく出てくる。
というより、この時期はぼくの関心がそちらのほうに向いているせいだろう。
おいちゃんのことは別として、テレビなどで生き物の特集をやっていると、つい見入ってしまう。
先日、『鉄腕!DASH!!』で八木橋の子供たちの映像や、アイガモが卵からかえるシーンが流れていたが、ぼくはなぜかそれを真剣に見ていた。
そういう動物たちに、何かすごく憧れのようなものを感じるのだ。
彼らは誰に教わったわけでもないのに、ひとりで出産したり、卵を温めたりしている。
元々生き物には、そういうことがインプットされているのだと思う。

それを考えると、人間はなんと情けない生き物なんだろう。
何事も、他人から教えてもらわないとやっていけない。
他人の力を借りないとやっていけない。
機械の力を借りないとやっていけない。
そういうことは、すべて「人間は偉い!」と思ったときから始まったのだと思う。
しかし、「人間は偉い!」と思うことは間違いである。
いや、勘違いである。
他の動物がひとりで出来ることを、人間は一人では出来ないのだから。
もしかしたら、いつかこういう甘えたシステムを変えなければならない時期が来るのかもしれない。
posted by 新谷雅老 at 10:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 酔っ払いブギ | 編集

2002年07月15日

夏の風物詩

最近また酔っ払いおいちゃんが来ている。
このおいちゃんは夏になると必ず店に涼みに来る。
そして、酒を飲み、他のお客さんを威嚇したり、店員に絡んだりしている。
一昨日は、お客さんが警察に通報したらしく、警察から事情聴取を受けていた。
昨日は昨日で、店内でタバコを吸ったらしく、店長からつまみ出された。
相変わらず大活躍しているようだ。

夕方、おいちゃんの声がした。
「なんか、こらぁ!!」、「きさま殺すぞ!!」などと言っている。
また始まった。
おいちゃんが怒鳴っている所に言ってみると、そこには若いカップルがいた。
どうもその二人に絡んでいるようだ。
「おいちゃん、何騒ぎよるんね」
「騒いでなんかないわい!」
「今、怒鳴りよったろうがね」
「普通にしゃべりよっただけたい」
「じゃあ、『殺すぞ!』とか言いなさんな。この二人に迷惑やろ」
「迷惑なんかかけてない」
「じゃあ、若い人の邪魔しなさんな。静かに座っとき」
「おう」
その後もしばらくしゃべっていたようだが、そのうち静かになった。

さて、閉店時間になった。
閉店準備をしに、出入口のところに行ってみると、まだおいちゃんがいた。
爆睡しているようだ。
ぼくと店長代理は、おいちゃんを追い出しにかかった。
「おいちゃん、起きり。もう時間よ」
おいちゃんは知らん顔して寝ていた。
「あんたがおるけ、店が閉められんやろうがね」
ぼくがおいちゃんの上半身を起こそうとすると、おいちゃんは起こされまいとして力を入れている。
「何ね、起きとるんやないね。早く出てくれんかねぇ。時間なんやけ」
するとおいちゃんは、壁を「バン!!」と力いっぱい叩いた。
そして、また寝た。
「おいちゃん、おいちゃん」
今度は死んだふりである。
「おいちゃん、いい加減にしときよ。そんなことするけ、新聞に『死んだふりをする』とか書かれるやろ」
おいちゃんは「死んだふりなんかしてないわい」と言いながら、起き上がった。
「もう時間よ」
「馬鹿じゃないんやけ、わかっとるわい!!」と、地下足袋のホックをはめだした。
しかし、そのまま固まってしまった。
ぼくが「また警察が来るよ」と言うと、おいちゃんは「何も悪いことしてないわい」と言う。
そしてまた寝た。

しかたがないので、店長代理と二人で、おいちゃんを担いで外に出すことにした。
が、体が小さいくせにに、このおいちゃんは重い。
まるで『子泣きじじい』である。
途中まで担いで、そこに下ろしてしまった。
それでもおいちゃんは寝たふりをしている。
また担ごうとすると、おいちゃんは目を覚まし、「一人で歩いていく。よけいなことするな」と言う。
そのままフラフラしながら、おいちゃんは店の外に出て行った。

台風の影響か、外はパラパラと雨が降っていた。
おいちゃんは、これからどうするんだろうか?
また自転車で、戸畑署に行って死んだふりをするのだろうか。
それを聞こうと思ったが、おいちゃんはそのまま自転車で立ち去っていった。
posted by 新谷雅老 at 11:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 酔っ払いブギ | 編集

2002年11月02日

酔っ払いおいちゃん、逮捕される

夕方だった。
突然、聞き覚えのある怒号が聞こえてきた。
「こら、きさま〜。なめとるんかっ!!」
お客さんの休憩所からだった。
ぼくは走ってその場所まで行った。
案の定だった。
聞き覚えのある声の持ち主は、酔っ払いのおいちゃんだった。
久しぶりの登場である。
おいちゃんは、ベンチで惣菜を食べながら、酒を飲んでいた。
「おいちゃん、何大きな声出しよるんね。他の人が迷惑するやろ」
「あ、大将。すいません。でも、子供が生意気なこと言うもんで」
おいちゃんの視線の先には、4.5歳くらいの小さな子が二人いた。
脇には二人のじいちゃんらしき人が座っていた。
「生意気なことっち、まだ子供やん。いい歳して子供相手にケンカなんかしなさんな」
おいちゃんは、「はい、すいません」と言いながら、また子供に向かって、「こら〜! 前科者をなめるなよ」などと凄みだした。
「前科者やないやろ、小心者やろ。いらんこと言いなさんな」
「はい。もう言いません」
「本当やね。大人しくしときよ」
「はい、すいません」

ぼくの姿が見えなくなるまで、おいちゃんは静かにしていた。
が、ぼくが売場に戻ると、子供の泣き声がしてきた。
それから、今度は違う声が飛んできた。
「こら、きさま。子供を泣かせやがって! 表に出れ!」
「何を〜!」
ぼくはまたおいちゃんのいる場所に走って行った。
おいちゃんに絡んでいたのは、子供のじいちゃんだった。
今度は人が入って止めていた。
じいちゃんには、娘が「お父さん、もういいけ帰ろう」と言っている。
しかし、じいちゃんの怒りは収まらない。
おいちゃんには店長代理が「おいちゃん、人に迷惑かけるなら出て行き」と言っている。
しかし、おいちゃんは言うことを聞かない。
「おれが悪いことしたか!」
ぼくが「人に迷惑かけよるやないね」と言うと、おいちゃんは「子供がこちらを見るけたい!」と言い返す。
「じゃあ、こっち側向いとったらいいやん」、とぼくは子供と逆の方向を指差した。
おいちゃんは黙った。
ぼくは、じいちゃんに「すいません」と謝ったが、じいちゃんはまだ怒りが収まらないのか、おいちゃんを睨みつけながら外に出て行った。

それからしばらくして、またおいちゃんの騒ぐ声が聞こえた。
が、だんだんおいちゃんの声は遠のいていった。
「どうしたんだろう」と思っているところに、店長代理がやってきて、「おいちゃん、逮捕されたよ」と言った。
「逮捕ですか」
「うん、あのじいちゃんが連絡したみたい。よっぽど頭にきたんやろうね」
「かわいい孫を泣かされたからですね」
「ま、これでまたいっとき来んやろ」
「案外、作戦やったかもしれんですね。今日は寒いけ、警察で寝たかったんやないですか」
「ああ、そうかもしれんね」

ところで、酔っ払いのおいちゃんは、いつも地下足袋を履いているのだが、その格好といい、頭の形といい、『あしたのジョー』に出てくる丹下段平に似ている。
これからは、矢吹丈ばりに「おっちゃん」と呼ばなければならない。
しかし、段平おっちゃんはボクシングの優秀なコーチだが、こちらのおっちゃんは何をコーチしてくれるんだろう。
強いてあげれば、酒のコーチか。
「立つんだ、ジョー」ではなく、「飲むんだ、しんた」となるわけか。
しかし、おっちゃんのように酒を飲みながら小便をちびる芸当は、ぼくには到底出来ない。
だめな弟子である。
posted by 新谷雅老 at 16:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 酔っ払いブギ | 編集

2002年11月09日

おいちゃん、しかぶる

このところ、毎日のように酔っ払いのおいちゃんが現れる。
今日は昼間から酔っ払って、他のお客さんにからんでいた。
まあ、この間警察に捕まったばかりなので、トラブルを起こすまでは至ってない。
ぼくのいる売場の隣にある、お客さんの休憩所から時折怒号が聞こえてきた。
「コラー、殺すぞ」
しかしいつものようなドスはきいてなかった。
そのうち静かになり、帰ったものとばかり思っていた。
ところが、たまに「コラー、文句あるんか」とか、「せわしいんたい!」などという声がする。
覗いて見ると、おいちゃんは海老のような格好をして寝ている。
休憩所にある団子屋さんに、「また、おいちゃんの怒鳴り声が聞こえたんやけど」と聞いてみると、団子屋さんは「寝言よ、寝言。時々寝たままで何かしゃべりよるんよね」と言った。
「しかし、今日は珍しくおとなしいね」
「うん、そう言われれば、そうやねぇ。来てすぐは、ほかのお客さんに絡みよったけど、いつもの迫力はないねぇ」
「まあ、起きたらまた荒れるやろうけ、何かあったら呼んで」
とぼくは、自分の持ち場に戻った。

それから30分ほどしてだろうか、さっきの団子屋さんが、「しんたさーん」と血相を変えて走ってきた。
「どうしたと?」
「おいちゃんが、おしっこ漏らしとるんよ」
「ええ?! 寝小便したんね」
「うん、床がもうビショビショ」
「わかった、すぐに行く」
ぼくは、バックヤードに行き、ぞうきんとバケツを用意した。

現場に駆けつけてみると、団子屋さんの言うとおり、おいちゃんの寝ているベンチの下は、一面おしっこだらけになっていた。
ズボンの股付近が濡れている。
ぼくが「おいちゃん」と声をかけても、全然起きる気配がない。
しかたなく、ぼくはおいちゃんのおしっこの後始末をした。
そこにいたパートさんが見かねて、「ゴム手袋でもはめて拭いたらいいのに」と言ってくれたが、ぼくは「たかだか、小便やないね。別に毒薬を触るわけじゃないんやけ」と言って、ぞうきんを絞った。

閉店時間になった。
おいちゃんはまだ寝ている。
ズボンはまだ乾いてないようだ。
「おいちゃん。もう時間よー」
起きない。
ぼくは何度かおいちゃんの体を揺さぶっった。
ようやく目を覚ました。
しかし様子が変だ。
普段なら、ここで大声を上げて、「なんか、コラー!」とくるところだが、今日はそれがない。
「おいちゃん、店閉まるよ。早よ帰らな」と声をかけても、ボーっとしている。
おそらく、「ここはどこか?」などと考えているのだろう。
もしかしたら、「私は誰?」と思っているのかもしれない。
顔が腫れている。
声にも力がない。
高校生のアルバイトをつかまえて、「おまえはおれの子供だ」などと訳のわからないことを言っている。

何分か後に、おいちゃんは立ち上がり、ヨタヨタしながら店を出た。
外は寒い。
股の部分は濡れたままだから、応えるだろう。
ぼくたちは、「今からどこに行くんやろうか」「おそらく、警察やろう」「警察が自分の家ぐらい思っとるけね」などと言い合った。

さて、明日は朝一番に、おいちゃんが寝ていたベンチを拭かなければならない。
これが苦痛です。
臭かったからなあ。
posted by 新谷雅老 at 16:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 酔っ払いブギ | 編集

2002年11月14日

おいちゃんは小心者

11日のことだった。
その日は忙しく、ぼくは倉庫と売場を行ったり来たりしていた。
夕方、ぼくが倉庫から売場に帰ってくると、例の酔っ払いおいちゃんが座り込んで相撲を見ていた。
いつものことなので、放っておいたのだが、それが間違いだった。
相撲が終わって、おいちゃんはいつものように「ああ、大将すいません。ありがとうございました」と言って帰ろうとした。
「いいえ」と言いながら、ぼくはおいちゃんのいるほうを見た。。
すると、おいちゃんの座っていた場所にタバコの吸殻が落ちているのが見えた。
ぼくが倉庫に行っている隙に、おいちゃんはタバコを吸っていたのだ。
「おいちゃん、ちょっと待ち。あんた、またここでタバコを吸ったね」
「・・・・」
「何回言うたらわかるんね」
「・・・・」
「約束しとったやろ。今度ここでタバコを吸うたら、相撲を見せんち」
「・・・・」
「もう明日から、ここに来たらいけんよ」
おいちゃんは、ぼくが文句を言っている間、子供が叱られている時のように、下を向いて黙ったままだった。
帰り際、おいちゃんは小さな声で「ごめんなさーい」と言った。

これで、おいちゃんもしばらくここには来ないだろう、と思っていたが、甘かった。
翌12日、ぼくは休みだった。
おいちゃんは、ぼくがいないのを見計らって、売場に相撲を見に来た。
そして、またタバコを吸い出した。
売場に女の子しかいないので、文句を言われないだろうと思っていたのだろう。
ところが、うちの女の子は気が強い。
「おいちゃん、タバコ吸ったね」と言うなり、テレビのスイッチを切ってしまった。
おいちゃんはテレビのスイッチの入れ方を知らないらしく、しばらく黙ったままで、そこに座っていた。
たまたま、そこに店長代理がやってきた。
「おいちゃん、どうしたんね?」
「テレビの電源切られた」
「何か悪いことしたんやろ」
「いや、何もしていません」
「テレビが見たいなら、つけてやるけ、おとなしくしときよ」
「はい、わかりました」
結局、おいちゃんは最後まで相撲を見ていたという。

昨日その話を聞いたぼくは、「おれは絶対見せん」と息巻いていた。
おいちゃんもさすがにその空気を察したか、昨日は売場どころか、店の中にも入ってこなかった。

ところが今日、またおいちゃんはノコノコと店の中に入ってきた。
ぼくの売場には近寄らなかったが、ほかの売場に行っては大声を張り上げている。
ぼくが事務所から売場に戻っている時だった。
おいちゃんが前を歩いていた。
いやな予感がした。
そのままぼくの売場に行くのではないだろうか。
ぼくは先回りして、おいちゃんの入場を阻止しようと思った。
が、運悪く、ぼくは他のお客さんに捕まってしまった。
「○○はどこにありますか?」
「ああ、○○はですねえ・・・」
売場に戻るまで、5分ほどの時間を要した。
おそらくおいちゃんは売場に座り込んでいるはずだから、また一戦交えなければならない。
「面倒だなあ」と思いながら、ぼくは売場に戻った。
が、そこにおいちゃんはいなかった。
帰ったか、と思っていると、後ろのほうからおいちゃんの声がした。
「えっ?!」と思って後ろを振り返ると、何とおいちゃんは売場の外から相撲を観戦していたのだ。
売場の外、つまり通路である。
おいちゃんは例のごとく座り込んでいる。
しかし、通路に座り込まれると、他のお客さんが迷惑する。
ぼくは躊躇せず、テレビの電源を切った。
しかし、切られたからといって、ぼくに文句を言うほどの度胸は、おいちゃんにはない。
おいちゃんは「くそー、切られた」と言って、その場を離れた。

閉店まで、おいちゃんは休憩所にいた。
他の人が構ってやるので調子に乗っている。
相変わらず、自慢話をし、誰かが話の腰を折ると、「なめるなよ、きさま」などと言っている。
しかし、ぼくはもうおいちゃんは飽きた。
話をするのも面倒だ。
ぼくが何も言わず、キッと睨むだけで、おいちゃんは目をそらし黙ってしまう。
おいちゃんも、もうぼくの売場に来ることはないだろう。
もし入ってきたら、有無を言わさずつまみ出す。
おいちゃんの小便の始末をしてから、ぼくはおいちゃんに対して、強くなった。
おいちゃんもそれを知っているから、ぼくに頭が上がらないのだろう。
気の小さい子供である。
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2002年11月28日

はーい

最近口癖になっているのが、「はーい」である。
これを低いだみ声で言うと、酔っぱらいのおいちゃんの物まねになる。
酔っぱらいのおいちゃんは、店長に優しくしてもらっているせいか、調子に乗っている。
大声で怒鳴るだけなら、かわいいほうである。
最近は他のお客さんからタバコをたかったりもするし、ひどい時には店の中で立小便をすることもある。
売場でタバコを吸われて以来、ぼくはおいちゃんに冷たく接するように心がけている。
それを感じたのか、おいちゃんのほうもぼくを避けるようになった。
それでも、おいちゃんの怒鳴り声が聞こえたら、他のお客さんに迷惑がかかるといけないので、素早くおいちゃんのいる場所に駆けつける。
そして、散々文句を言う。
「おいちゃん、店の中で大声出したらいけんち言うたやろ」
「お前に関係なかろうが。コラッ!」
「『コラッ』ちゃ、誰に言いよるんね」
「・・・」
ぼくが睨むと、おいちゃんはすぐに目をそらす。
そして、下を向いて、聞いてないふりをする。
「ここにおりたかったら静かにしとき。わかった?」
「わからん」
「わからん?」
「あ、わかった」
「ここはあんたの家じゃないんやけね。大きい声出すと、他のお客さんがびっくりするやろ?」
「何をっ! わしは若い頃、声を鍛えたんぞ」
「はいはい、そんなに大声が出したかったら、こんな狭いところじゃなくて、洞海湾に行って叫んできたらいいやん」
「何かコラッ!・・・。はーい」
「今度大声を出したら、つまみ出すけね」
「はーい」

その後しばらく様子を見ていると、おいちゃんは独り言を言い出した。
「おれは悪い人間じゃない。お、コラッ。・・・、はーい」
「ブツブツブツブツ。はーい」
一人で言って、一人でうなずいている。
いよいよ頭がおかしくなったのだろうか。

それから、ぼくはおいちゃんに文句を言うたびに、「はーい」と真似してやることにした。
おいちゃんは、きっとなめられていると思っているのだろう。
が、相変わらずぼくの顔を見ない。
顔をよそに向けて、言い返している。
「何で、おればかりに文句を言うか!おれは前科モンぞ、コラッ!」
そこですかさずぼくは「はーい」と言う。
「ふざけんなよ、コラァ!」
「はーい」

先日、ベンチの周りにポテトチップスの食べかすが散らばっていた。
お客さんが「そこ、例のおいちゃんが座ってましたよ」と教えてくれた。
その翌日、おいちゃんがベンチに座ってポテトチップスを食べているのを見つけた。
案の定、周りに食べかすが散らばっている。
「ポテトチップスを食べるなとは言わんけど、もう少しきれいに食べり。昨日おいちゃんの食べかすを掃除したんやけね」
「大将、わたしはですなあ。悪い人間じゃありませんけ」
「悪い人間やないんなら、ちゃんと自分の食べた後始末ぐらい片づけなね」
そう言ってぼくは、売場からホウキとチリトリを持ってきた。
そして、それをおいちゃんに突きつけ、「自分が散らかしたんやけ、ちゃんと自分で片づけり」
おいちゃんは相変わらずぼくの顔を見ず、「はーい」と言うと、ぼくからホウキを取り上げ、そのへんをはわきだした。
「やれば出来るやないね」
「わたしはきれい好きですけ」
「誰がきれい好きなんね」
「・・・。はーい」

今日、店内放送で店長から呼ばれた。
行ってみると、店長は一枚の紙をぼくに渡した。
その紙には、
『酔っぱらいのおじさんから、「山芋を買え」としつこくせまられました。こちらが「いりません」と言うと、大声で怒鳴り出し、子供が泣きだしました。ああいう人は出入り禁止にして下さい。店の人も、もっと強気に対応して下さい』
とお客さんの苦情が書かれていた。
ぼくがそれを見て、「『強気に対応して下さい』と言われても、他のお客さんの建前、言えませんよねえ」と言うと、店長も「そうよねえ。その人はいいかもしれんけど、知らないお客さんには良く映らんとねえ」と言う。
こちらとしては、おいちゃんが他のお客さんに絡み出したら、注意することしかできない。
その際、こちらから「いいかげんにしとけよ。出て行け!」などと言えるわけがない。
注意して言うことを聞かなかったら、後は警察を呼ぶだけだ。

夜、おいちゃんは、いつものようにベンチで寝ていた。
閉店になったので起こしたのだが、なかなか起きようとしない。
仕方なく、おいちゃんを店の外に引きずり出した。
後ろから脇を抱えて引っ張ったため、時々首が絞まったのだろう、「ウェー、何か、ウェー、コラッ、ウェー」とあえぎながら言っていた。
外に出すと、「コラッ!殺すぞ、コラッ!・・」と、一人でわめきだした。
しかし、誰も相手にしなかった。
おいちゃんは、またそこで寝ころんでしまった。
後で店長が、「外は寒いけ、あのままだと死んでしまうやろね。110番しとこ」と言って、電話をかけていた。

帰る時、ぼくはおいちゃんが寝ている横を通って行った。
パトカーが来ていた。
3人の警察官が対応していた。
おいちゃんが動こうとしないので、困っている様子だった。
まさか警察に向かって「殺すぞ、コラッ!」と言ってないとは思うが。
posted by 新谷雅老 at 16:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 酔っ払いブギ | 編集

2004年02月08日

酔っぱらいブギ(上)

「何か、こらぁ!」
今年もまた、この声が帰ってきた。
酔っぱらいおいちゃんである。
店の改装後、しばらく姿を見せなかったが、寒くなってまた舞い戻ってきた。
あいかわらず、どこで拾ったかわからない自転車に乗ってやって来、隣のスーパーで酒を買い、適当に出来上がったところで大声を上げ騒ぎ出す。

昨日、酔った勢いで、繋いであった犬にちょっかいをかけ、手を噛みつかれたらしい。
その犬の飼い主にさんざん文句を言って、慰謝料1000円を巻き上げたという。
また、銀行のキャッシュディスペンサーで、お金をおろしている女の人に、「こらぁ、いくら出すんか!?」などと凄んでいたという。
結局、店の人間とすったもんだの末、警察に通報されご用となった。

今日も昼からやってきて、大声を上げていた。
ぼくが遠巻きに見ていると、おいちゃんはぼくの姿を見つけ、「おう、大将。昨日も来たんだけど、あんたいつ来ても休みですなあ。わたしゃ、あんたに用があってですなあ…」と言う。
聞けば、携帯テレビの調子が悪いということだった。
おいちゃんは、ぼくが電気売場の人間だということを知っているので、ぼくに逆らうとテレビやラジオの修理などで便宜を図ってもらえないと思ってか、ぼくの前では大人しくしている。
だが、声は大きい。

このままだと、また人に迷惑がかかると思ったぼくは、「おいちゃん、おれ、トイレに行く途中っちゃね。歩きながら話そうや」と言って、外のトイレに向かって歩き出した。
すると、おいちゃんもぼくに付いてくる。
まんまと外に連れだして、「おいちゃんの話はわかったけど、現物を持って来な、どういう状態かわからんやん。今からとっておいで」と、ぼくは言った。
「いや、今日は持って来れんですけ、別の日に持ってきます」
「じゃあ、おれ、トイレに入るけね。おいちゃんも、外は寒いんやけ、早く家に帰り」
そう言って、ぼくはトイレに行く振りをし、別の入口から店内に入った。

しばらくして、外を見てみると、何とおいちゃんは玄関の前で寝ているではないか。
何人かの人が、おいちゃんを見ている。
ぼくは、おいちゃんの寝ているところに行き、「おいちゃん、起きんね。風邪引くよ」とおいちゃんを揺さぶった。
ところがおいちゃんは、起きる気配がまったくない。
それを見ていたお客さんが、ぼくに「酔っぱらってるんですか?」と聴いた。
「ええ、いつもこうなんですよ。深酔いするとあたり構わず寝て、中途半端に酔いが冷めると騒ぎ出す。困ったもんですよ」
それを聴いて、お客さんは笑い出したが、起こすのを手伝ってはくれなかった。
posted by 新谷雅老 at 17:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 酔っ払いブギ | 編集

2004年02月09日

酔っぱらいブギ(下)

幸い、日が照っていて、それほど寒くはなかったので、「風邪を引くことはないだろう」と思い、いくら起こしても起きないおいちゃんを、しばらくそこに放っておくことにした。

それからしばらくしてから、またおいちゃんの叫ぶ声が、店内から聞こえた。
そこに行ってみると、おいちゃんは店長とやり合っていた。
「出て行ってくれ!」
「何で、出らないけんとか。おれはお客さんぞ」
「人に迷惑かけるような人は、お客さんじゃない!」
そう言って、店長はおいちゃんを引っ張り出そうとした。
しかし、おいちゃんは抵抗する。

おいちゃん、歳はとっていても、毎日芋掘りで鍛えているから、力だけはある。
到底一人の力では、おいちゃんをつまみ出せそうにないので、周りにいたぼくたち従業員が、おいちゃんの手や足を取り、そのまま持ち上げて外に運び出した。
誰かが「放り投げれ」と言った。
それを聞いたおいちゃんは、「投げるな!」と言った。
また誰かが、「このへんにしようか」と言うと、おいちゃんは「いいか、そおっと置け、そおっと」とぼくたちに指示をした。。
酔っぱらってはいるものの、わりと冷静である。
おいちゃんを、そのまま外に置いて、ぼくたちは店の中に入った。

店内に入ると、清掃のおばちゃんたちがブツブツ言っていた。
「どうしたと?」と聴くと、「あのおいちゃん、おしっこをまりかぶっとるんよ(注;おしっこを漏らした、という九州弁。おしっこをしかぶった、とも言う)」と言う。
またである。
昨年も、おいちゃんはこの時期に、店の入口の中で立ち小便をしたり、寝小便をして、ぼくたち従業員を泣かせているのだ。
おいちゃんが来るということは、おいちゃんとの格闘以外にも、おしっことの闘いも覚悟しておかなければならない。

ところでおいちゃんだが、その後むっくりと起き出し、また店内に入ってきた。
何度追い出されても意に介せず、舞い戻ってくるのだ。
まさにゴキブリのようなしぶとさである。
posted by 新谷雅老 at 17:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 酔っ払いブギ | 編集


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