2022年03月11日

青春のスクイズ

きっとあいつは走ってくる。
砂煙を上げ滑り込んでくる。

ベンチはヒッティングから
スクイズサインに切替えた。
ベース上で土を払っている
あいつの目に覚悟が見えた。

一点ビハインドの九回の裏
あいつを生還させなければ
この一戦が引退試合になる。
優勝なんて望んでないけど
出来ることなら一試合でも
多く野球をしたい。これが
チームみんなの思いなのだ。

だからあいつは走ってくる。
砂煙を上げ滑り込んでくる。

ピッチャーがこちらを向き
投球モーションにはいった。
同時にあいつが走り出した。
球が外に大きくそれていく。
バットがそれを追っていく。
球はミットの中に収まった。

後戻れないあいつの勢いが
ホームに滑り込んできた──
posted by 新谷雅老 at 07:52 | ぶるうす | 編集

ノルウェーの森

クルマのエンジンをかけると
スピーカーからビートルズの
ラバー・ソウルが流れてきた。
ビートルズのアルバムの中で
一番好きなのはと聞かれたら
ぼくはこのアルバムだと言う。
特に深い思い出はないのだが
ただなんとなく心地いいのだ。

軽快なベースの一曲目のあと
ノルウェーの森がはじまると
ぼくは得意げにこう言うのだ。
「森というのは家具の誤訳で
ノルウェー製家具というのが
正しいんだ」すると嫁さんは
少し呆れた顔をして「前にも
同じこと言ってたよ」と言う。
posted by 新谷雅老 at 19:11 | ぶるうす | 編集

2022年03月12日

大大

知り合いのお子さんがこの春から
大分大学に進学するということで
それはおめでとうございます。と
あいさつしたのだが、その最中に
僕は素朴な疑問を抱いたのだった。
東京大学は東大、京都大学は京大
九州大学は九大と呼ばれているが
大分大学は何と呼ばれているのか?
もしかして大大(ダイダイ)では。

もしそう呼ぶのなら面白いと思い
そのへんのところを聞いてみると、
いや分大と呼ぶんですよ。と言う。
オオイタダイだからイタダイでも
大分の逆だからイタオオでもなく
普通読みでブンダイと言うらしい。
大阪大学も大大ではなく阪大だね。
こちらもサカダイとは読まないか。
posted by 新谷雅老 at 19:12 | ぶるうす | 編集

2022年03月13日

自由

70年頃に流行った言葉の一つが
「自由」だった。何でこの言葉が
流行ったのかは知らないが周りは
事あるごとに自由を主張していた。

深夜ラジオの影響もあって当時は
中学生だったぼくも時代に便乗し
何かにつけて「自由、自由、自由」
と連発して口にしていたのだった。

もちろんそこに思想などはなくて
自由という言葉を口にすることで
時代の最先端にいるように思えて
自分の中でカッコよかったのです。

迷惑していたのは父さん母さんで
何かにつけて「自由、自由、自由」
と言う青二才を相手にするたびに
自分で何一つ満足に出来ないのに
何が自由だ、と言って怒っていた。

おっしゃる通りでした、お父さん。
ぼくが間違ってました、お母さん。
当時は全く判らなかったのですが、
月日の流れから自由という責任の
重さを教わった今ならわかります。
posted by 新谷雅老 at 06:23 | ぶるうす | 編集

2022年03月14日

今日の誓い

行動のひとつひとつに
「大丈夫!」を添えてみる
嫌なことひとつひとつに
「ありがとう」と言ってみる

身に起きる事ひとつひとつを
夢につなげて考えてみる
日々の出来事ひとつひとつを
夢への過程だと思ってみる

今日が大吉であるために
『今日の占い』を見ないでおく
今日の大凶を避けるために
心に笑い話を用意しておく

これまでの人生を
幸せ視点で振り返ってみる
これからの人生を
その延長上に置いてみる
posted by 新谷雅老 at 09:06 | ぶるうす | 編集

生きている

神の前で宗教を必要とする
ヒトが体を曲げ祈っている。
その横で宗教を不要とする
ネコが体を曲げ毛繕いする。
おたがい懸命に生きている。

ヒトは安らぎを得るために
必死に神や仏を求めている。
ネコは安らぎを得るために
必死に肉や魚を求めている。
おたがい懸命に生きている。
posted by 新谷雅老 at 23:22 | ぶるうす | 編集

2022年03月16日

ラバーソウル

高校三年の秋の下校時、部活を
引退したぼくを待っていたのは、
慣れない夕方のラッシュだった。
引退前は帰るのが遅かったので
バスの中は毎日ガラガラだった。
乗っている時間は短かったけど
僅かな時間、だだっ広い空間で
ぼくは疲れた体を横たえていた。
その心地よさに慣れているから
窮屈なラッシュは地獄に思えた。

地獄の思いで家に帰ったあとは
受験勉強なんぞまったくせずに、
西日の差し込む三畳の小部屋で
ラバーソウルに針を落としては
歌の中にこころを遊ばせていた。
今でもラバーソウルを聴く度に
オレンジ色が浮かんでくるのは、
夕日に照らされた三畳の部屋が
心の中で蘇るからにちがいない。
posted by 新谷雅老 at 00:34 | ぶるうす | 編集

道路工事

いつもこの道は一車線を封鎖して
掘っては埋めての工事をしている。
始まってから十年を過ぎているが
いつまでたっても終りそうにない。

一応いついつまでとは書いていて
工事は期日どおりに終わっている。
ところが翌日になると別の車線で
あらたな工事が始まっているのだ。

路面の矢印も書き換えられていて、
昨日までは直進だった中央車線が
今日は何と右折車線になっている。
どの車も右往左往している状況だ。

この道の何かがお役人の気に障り
始められた工事なんでしょうけど
十年やっても改善されないのです。
そろそろ諦められたらどうですか。
posted by 新谷雅老 at 07:13 | ぶるうす | 編集

自分を嗅いでいる

お年寄りとすれ違った時、
ツンと鼻につくものがあった。
「ああ、これが加齢臭か」
そう思いながら、
ぼくは自分を嗅いでいた。

ある人と打ち合わせをしていた時、
思わず顔を背けたことがある。
「ああ、ひどい口臭だ」
そう思いながら、
ぼくは自分を嗅いでいた。

他人の臭いが気になるたびに、
自分の臭いが気にかかる。
おそらくおならの臭い以外、
自分の臭いには気づかないもので、
だから他人を基準にしてしまう。

街でブーツの女性を見た時に、
思わず一人でほくそ笑んだ。
「彼女はきっと足が臭い」
帰ってそのことを思いだし、
ぼくは自分を嗅いでいた。
posted by 新谷雅老 at 18:29 | ぶるうす | 編集

2022年03月17日

筋肉痛

一月下旬の事故の後、医者から
筋トレをするなと言われたので
しばらく筋トレを休んでいたが、
昨日筋トレOKの許可をもらい
とりあえず腕立から始めてみた。

久しぶりにやったので「明日は
筋肉痛かもな」と思っていたら
案の定、今日の朝から腕が痛い。
特に酷いのが左の上腕三頭筋で
夏のワクチン接種と同じ箇所だ。

注射でないので腫れてはいない、
が、痛みはほとんど変わらない。
痛みが長引いたらどうしようか、
まもなく三回目接種があるのに。
痛みの上乗せはちょっときつい。
posted by 新谷雅老 at 09:29 | ぶるうす | 編集

2022年03月18日

LOVE

1,
我々が宇宙と呼んでいるものは
実は一つの生命体なのだという。
そして宇宙意思と呼ばれている
その生命体の持つ根本の欲求が、
この宇宙の中で最高の美となり
寄生者はそれを愛と呼んでいる。
つまり愛の意味するもの全てが、
深遠なる宇宙の意思、すなわち
生命体根本の欲求だという訳だ。
高尚深遠、壮大かつ助平である。

2,
例えばその生命体が蚊だったら、
生命体の持っている根本の欲求、
つまり血が最高の美なのだから、
血を愛と呼ぶことになるだろう。
そこに棲まう生物の持つ宗教は、
もちろん血であって、血を求め、
血に感謝し、血に安らぎを得る。
異次元の生物から見ると変だが、
彼らにとってそれが唯一無二の
愛であり真理ということになる。

例えばその生命体が蝿だったら、
真田虫やフンコロガシだったら、
実に愛は、リアルなものである。
posted by 新谷雅老 at 07:57 | ぶるうす | 編集

2022年03月19日

1980年3月

八幡に戻った1980年3月末、
中々職が決まらず苦労していた。
前年就職口を決めていたのだが
どうも行く気が起きずに断った。
代わりの企業を探したんだけど
これといった所が見つからない。

当時は就職情報誌の数も少なく、
さらに東京のそれとくらべると
こちらのは遥かに薄っぺらくて
情報もちょっとしか載ってない。
仕方なく職安を頼ることになる。

職安で「資格は持っていますか」
と聞かれたので「日商簿記」と
答えると「ここはどうでしょう」
と駅の真ん前のビルの中にある
会社の事務職を紹介してくれた。

会社には頭のハゲた所長がいた。
彼は開口一番「事務だ?うちは
事務の募集なんかやってないぞ。
誰からそんなことを聞いたんだ」
と偉そうにのたまうではないか。

「職安から聞いてきたんですが」
「だから事務は取ってないから」
話が噛合わない。挙句にハゲは
「きみは一体何をしにきたんだ」
とえらそうに説教を始めたのだ。
ハゲの説教はクドクドクドクド
二十分以上にも及んだのだった。

数年後そのビルに行ってみると
すでに会社はなくなっていたな。
きっと潰れたんだろう。あんな
人間が所長を務める会社じゃね。
そんな所に入らなくてよかった。
posted by 新谷雅老 at 06:32 | ぶるうす | 編集

2022年03月20日

来世の夢

前世の場面を夢に見ることがある。
現世の夢よりも少し煤けた背景で
言葉遣いや服装がどこか古くさく
そこに懐かしい感情が加わるので
それが前世のことだとわかるのだ。

夢に出てくる場面はいつも同じで
特殊な大事件や事象などではなく
ありふれた生活風景が映っている。
きっと前世の人生は大事件よりも
日常の方が印象深かったのだろう。

さてこの人生は来世の人生の夢に
現世のどの場面を持込むのだろう。
事件や事象ではないのだとしたら
例えば頻尿で目覚める夜中だとか
寝不足の毎日を持込むのだろうか。
posted by 新谷雅老 at 06:42 | ぶるうす | 編集

2022年03月21日

ある家族の日記

1,生立ち
わたしはこの家に住む家族の一員です。
目が開いてからずっとこの家にいます。
目が開く前は別の所にいたようだけど
その頃のことは全く憶えておりません。

2,夢
わたしは子供でまだ四つ足歩きですが、
目線が低く色々不便を感じてきました。
早く大きくなって、他の家族のように
二本足で歩きたいなと思っております。

3,毎日の生活
出不精のわたしは外に出たことがなく
毎日毎日家族やボールと遊んでいます。
家の中を探検したり、それに飽きたら
お気に入りのミカン箱で居眠りしたり
本当に快適な毎日を過ごしております。

4,最近の出来事
この家から外に出ないので他の動物を
これまで見たことなかった。ところが
先日洗面所で遊んでいたら変な動物が
壁の向こう側にいるのを見つけたんだ。
毛むくじゃらで丸顔で耳が立っていた。

ヤツはジッとこちらをうかがっていた。
なかなか目をそらさないので頭にきて
フーッと脅してみたら、なぜかヤツも、
壁の向こうでフーッの真似をしている。
初めて見る動物だったし気味悪かった。

5,悩み
最近気になっていることがあるのです。
それは他の家族との言葉の問題でして
こちらの言葉が中々相手に伝わらない。
だから飯を要求しても飯が出てこない。
なぜなんだろうといつも考えています。

わたしがまだ子どもだからでしょうか。
わたしの言葉がおかしいのでしょうか。
posted by 新谷雅老 at 09:23 | ぶるうす | 編集

猫道

とある団地の敷地内にある
駐車場に繋がる道の両脇に
所々蓋の取れた側溝がある。
住民達はその側溝のことを
猫道という名で呼んでいる。

何でもその団地内に複数の
猫の家族が棲みついていて
そんな猫たちがその側溝を
通り道として棲み家として
常日頃利用しているという。

奴ら突然飛び出してきたり
車に足あとをつけてみたり
タイヤに小便引っかけたり
夜中に大声出して騒いだり
とにかく迷惑な存在らしい。
posted by 新谷雅老 at 23:34 | ぶるうす | 編集


Copyright(C) 2000-2022 しろげクラブ. All rights reserved.