2022年05月25日

五月の病気

 今から四十四年前、東京に出た年のちょうど五月のこの時期のことだったが、集中力の欠けた、気合いの入らない毎日をぼくは送っていた。
 五月病だったのかというと、そうではない。実は腫れ痔に悩んでいたのだ。別に不衛生にしていたわけではないのだが、なぜかお尻はいつも痛みと熱を持っていて、それが気になって落ち着かない。時には急にふさぎ込んだりするもんで、周りから変な人と思われていたようだ。

 痔のことを周りに言えば変な人と思われることもなく、あわよくば同情する人が現れて、そこから友情も生まれたかもしれないが、六十歳を過ぎた今ならともかくも、二十歳になったばかりの若者が、
「いやー、実は腫れ痔でね」
 なんて易々と口に出来るわけがない。
 というわけで、東京に出てから数ヶ月、ぼくはその恥ずかしい病気が原因の、孤独で寂しい人だったのだ。
posted by 新谷勝老 at 17:13 | 日記 | 編集


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