2022年05月25日

友人からの電話

 先日、友人から電話が入った。
「おまえ、トーカイシを知っとるか?」
 その言葉を聞いて、ぼくの頭の中を、『十日石』という文字がよぎった。
『十日石、さてどんな石だったろうか?』
 いや、友人は石のことを聞いて来るような人間ではない。
『トーカイシ、トーカイシ・・。あ、もしかしたら東海市かも知れん』
 そこで「それは地名か?」と聞いてみたら、友人は「そうだ」と答える。

 東海市なら知っている。
「知っとるよ。名古屋の隣の東海市やろ」
「それは最近出来た市か?」
「いや、何十年も前からあるぞ。中学になる前からその地名やったから、もう五十年以上になるんじゃないかの。以前は知多郡何とか町やったと思う」
「えらく詳しいのう」

 東海市、久しぶりに聞く地名だ。そこは母の下の弟がかつて住んでいた所で、その知多郡何とか町から東海市に変わったと聞いたのが、その地名を耳にした最初だった。
 それから数年、年賀状や手紙のやりとりをしていたが、その後まもなく叔父が名古屋市内に引っ越したために、東海市という地名を使うこともなくなった。それ以来、ぼくの中から東海市という地名が消えたのだった。

 ぼくが小三の時、そう、まだそこが知多郡何とか町だった頃に、一度だけ家族総出で行ったことがある。その叔父の結婚式をそこでやったのだ。
 すでにその結婚式のことは忘れているが、ひとつだけ忘れられない出来事がある。そこに行った時に入った茶店での話だ。
 その店でぼくはトコロテンを頼んだ。すると店の人が持ってきたのは、トコロテンと割り箸の片割れだった。それを見て母が、
「箸が一本しかありません」と言うと、店の人は
「トコロテンは箸一本で食べるもんですよ」と、それが当然のように仰せられ、残りの割り箸は持ってきてくれなかった。しかたないので、ぼくは箸一本で四苦八苦しながら食べたのだった。
「所変われば食べ方も違う」と、その時のことを母や伯母はいまだに言っている。
posted by 新谷雅老 at 06:10 | 日記 | 編集


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