2022年05月22日

田んぼの中の家

 ぼくの通った小学校から少し離れた地区に、一面田んぼだらけの場所があり、そこに仲のいい友だちの家があった。
 夏の暑い日、その友だちの家の庭に巣くっていたアリジゴクを観察しに行ったり、冬の寒い日、グリコアーモンドチョコレートの懸賞賞品だった「おしゃべり九官鳥」を見せてもらいに行ったり、数々の思い出の中に、田んぼの中のその家は登場する。

 小学生の終わる頃、その友だちは引っ越してしまい、以来そこに行くことはなくなった。
 それから数年後、ぼくの行かなくなったその場所で、国道のバイパス工事が始まった。道は街を作り、街は人を呼ぶ。当然のように一面の田んぼは消され、多くの建物がその一帯を飾るようになった。そしていつしか町名も変わった。

 先日その場所を嫁さんと訪れてみたのだが、かつて通った懐かしい友だちの家はすでになく、近くには駅が出来、跡地にはグルメ本にたびたび登場する洒落たパスタの店が建っていた。
 ローマ字の「A」で始まるその店の名を、なぜかぼくは「アリジゴク」と読んでしまい、嫁さんに笑われたのだった。
posted by 新谷雅老 at 18:04 | 日記 | 編集


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