2002年11月16日

トーキング・ブルース

 「ブルース1」

たまらない、たまらない。
わけのわからない虚脱感がぼくを揺さぶる。
何も間違ってはいない。
ここにあるのは、ぼくの踏みしめてきた道だ。
誰かに邪魔されているわけでもない。
確かに歩いてきた道だ。
なぜなんだ。
こんなことはなかったはずだ。
おそらくこの先も人生を追いかけていくだろう。
間違いない。
これだけは決して間違いない。
怖れは将来に対してではない。
ましてや過去に対してでもない。
今 − 。
部屋の中ではブルースが鳴っている。
これも一面ぼくの人生じゃないか。
どこが、どう違うというのだ。
たまらない、たまらない。
この虚脱感はいったい何なんだ。
心のあり方だっていうのか。
そんなもんじゃない。
にじみ込む、何かなんだ。」
説明のつかない、わけのわからない、
逃れることの出来ない、
不思議な、不思議な、何かなんだ。
たまらない、たまらない。
いつまで続くのかもわからない。
そんな、ぼくの人生の一面なのか。


 「ブルース2」

今のあり方は、すべて今のあり方で
過去何があったのか、過去何をしてきたのかを、
ぼくは問わないことにしよう。
例えば意識にしろ今のあり方で、
その中に潜む心も今のあり方で、
それはそれで否定することをしない。
ただ、それを意義づけるようなことだけは、
ぼくは避けることにしよう。
今はいくつもに分かれた心というもの
ひとつひとつに強くありたい。
その中に絡みつくような、
そんな愚かなことは、
ぼくはやめることにしよう。
強くたって弱くたって関係ない。
それは今が流れているから起こる現象にすぎない。
そんな流動的なことを正当化するような卑怯な考えは、
ぼくは持たないことにしよう。
何もかも、今そのままでありたい。
今そのままでいるようにしたい。
そして不変の中に飛び込みたい。
ぼくはそれだけにしよう。


 「ブルース3」

自信過剰に猜疑心。
自惚れと自己満足。
どことなく似合わない仕草は、
お前たちを道化師へと変貌させる。
お前たちの持つ異様な臭気が、
変な仲間を呼び込んで、
また自己満足を繰り返す。
真夜中の妖怪。
場末の文化人。
夢を持たない、
自称詩人たち。


 「ブルース4」

一秒一秒の長さが、ぼくにはわからない。
長くもあり、短くもあり、
またその中で、
長くもあり、短くもあり、
そのずっと極まったところに道がある。

ぼくにはあなたたちの一秒がわからない。
あなたたちにはぼくの一秒がわからない。
一秒が人生なのです。
一秒が個性なのです。
一秒が神なのです。
一秒が宇宙なのです。


 「ブルース5」

その時その時の忘れ物が、
ぼくの心の煩悩となる。
思い出話は、忘れ物を繕おうと、
何かと一生懸命だ。
いったいその時、何を忘れたのか。
そのことも忘れてしまって、
思い出話は、そのことを思い出そうと、
今もなお、やまない。
複雑な忘れ物は、
ぼくの性格を形作る。
個性は確立したものじゃない。
いつも確立しつつあるものだ。
そんな時、夢は語れない。
忘れ物は前へと進ませてはくれない。
今もなお、日々の忘れ物は、
ぼくの未来を形作ろうとしている。


 「ブルース6」

君がどうなっているのか、
今のぼくには関係ないことだ。
幸せになっているのか、
不幸だと思っているのか、
そんなことを考えるのもおっくうだ。

ぼくは現実の君を知らない。
知りたいとも思わない。
時折夢に現れる君も、
想い出の延長だとしか思えない。
いまだ心が繋がって君が現れているとしたら、
それは素晴らしいことなんだろうけど、
そうそう奇跡なんて起こらない。
今そうであろう君の姿も、
今そうであろう君の言葉も、
みんな想い出の延長でしかない。
想像だけの産物だろう。

そういえば、ぼくは君の想い出を、
そう多く持っているわけではない。
少なすぎるくらいだ。
あの頃は、決して楽しい時期ではなかった。
くだらぬ悩みに沈んでいた時期だった。
被害妄想と自己顕示欲。
この二つが、いつもぼくの中にあった。
そこに君の存在という希望を見つけた。
来る日も来る日も、君のことを想い続けた。
それで世界が変わると思った。
それでぼくは大きくなれると思った。
それが一つの救いだった。

だけど、振り返ってみると、
ぼくの人生は、
思っていたほど悲劇ではなかったし、
ぼくという男は、
思っていたほど大した奴ではなかった。
それを知った時、
君への想いが白々しいものへと変わった。

君がどうなっているのか、
今のぼくには関係ないことだ。
幸せになっているのか、
不幸だと思っているのか、
そんなことを考えるのもおっくうだ。
posted by 新谷勝老 at 23:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 詩風録 | 編集
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