2002年12月18日

履歴書 その7

1973年4月、福岡県立×高校入学。
この高校は、前にも書いたとおり、女子の多い高校だった。
元高等女学校ということもあり、女子にとっては名門高校だった。
後年、同級生の女の子に就職を紹介したことがある。
その時、面接の人が「ほう、×高校出身ですか」と言って感心していた。

しかし、男子はそうは見られない。
周りの高校から、「あの高校には軟派な男が多い」と言われていた。
面白くないのは、近くの工業高校の生徒である。
彼らは、ただでさえ女っ気がなく悶々とした生活を送っている。
そういう彼らにとって、ぼくたち×高校の男子はやっかみの対象だった。
かなりの数の人間が、彼らに殴られたり、たかられたりという被害に遭っていた。

3年の時だったが、部活を終えて、ぼくたちは何人かでお好み焼き屋に行った。
お好み焼きの焼き上がりを待っている時だった。
ががやがやと例の工業高校の生徒が多数入ってきた。
彼らはぼくたちを見るなり、「お、×高校の奴がおる」となめた口調で言った。
ぼくたちはそれを聞いてカッとしたが、トラブルを起こすのが嫌なので無視していた。
彼らは、
「女ばっかり追いかけていい身分やのう」
「あいつ、ホック開けとうぞ。えらそうやのう」
などと、ぼくらに聞こえるように言った。
その時、その雰囲気を察したお好み焼き屋のおばちゃんが、機転を利かせた。
「あ、×高の柔道部の人。もうすぐ焼けるけね」
おばちゃんがそういうのを聞いて、工業高校の奴らは「あいつら、柔道部らしいぞ」と小声で言った。
それから、店の中は静かになった。
お好み焼きを食べ終わり店を出る時、ぼくはそいつらのほうを見た。
すると、そいつらはみな下を向いた。
男子が多くいるから強いつもりでいるが、所詮その程度の人間の集まりである。

しかし、「柔道部」というのが効かない学校もあった。
今話題になっている国の高級学校である。
ぼくはその学校の生徒から、同じ日に二度被害を受けたことがある。

1年の夏休み前のことだった。
行きがけ、友人とバスを待っている時のこと。
突然、一人の男がぼくの腕をつかんできた。
何だろうと思っていると、その男は「おい、100円持ってないか」と言う。
ぼくが「持ってない」と言うと、その男はぼくの横にいた友人に「お前は?」と聞いた。
友人も「持ってない」と言った。
その男は、その横にいたもう一人の友人にも同じことを聞いた。
その友人も同じ答だった。
男は頭に来て、「ふざけるなよ」と言うなり、端にいた友人の腹部に蹴りを入れた。
続いて、ぼくの横にいた友人にも蹴りを入れた。
次はぼくの番である。
しかし、ぼくは男の手を振り払い、2,3歩男から離れた。
男がぼくに襲いかかろうとしたので、ぼくは身構えた。
そして「持ってないもんは持ってないんたい!!」と大声で怒鳴った。
その一喝が効いたのか、男はそれ以上ぼくに近づこうとはしなかった。
そして、通りを歩いている学生を振り払いながら、男は駅の方に行った。
友人たちの方を見ると、彼らは腹を押さえてうなっていた。
ぼくが駆け寄ると、友人の一人が「しんたもやられたんか」と聞いた。
ぼくは、身構えて男を一喝したということは話さずに、「おれは逃げた」と答えておいた。

その日は試験期間中だったので部活は休みだった。
当然いつもより早く帰れる。
ぼくはクラスの友人と、普段とは違う道を通って帰った。
その道は野球場の裏側の道だった。
そこには林があるのだが、友人とその林にさしかかった時だった。
一人の男がぼくたちに近づいてきた。
「おい」と彼は言った。
「あ!?」とぼくが振り向くと、彼はぼくの横っ面を殴った。
そして、彼はぼくにナイフを突きつけた。
「こっちに来い」
ぼくたちは仕方なくついていった。
そこには彼の仲間がいた。
そして、彼らの一人がぼくたちに向かって、「こら、お前たち、おれたちのことを朝鮮ちいうて馬鹿にしよるやろうが」と言った。
ぼくは『チッ、こいつら朝高か。面倒やのう』と思いながら、「別に馬鹿にしよらんよ」と言った。
「うそつけ」と彼は、ぼくの頬を殴った。
二度も殴られたので、ぼくは頭に血が上り、その男を睨みつけた。
「なんかその目は?」
さっきの男がそう言って、またナイフをちらつかせた。
すると、他の男が「おい、ナイフはやめとけ」と言った。
ぼくは『こうなれば一戦交えんといけん』と腹をくくった。
ところがその時、『ナイフはやめとけ』と言った男が、「お前たち、もう行ってもいいぞ」と言った。
ぼくたちが唖然として立っていると、「早く行け」と言った。
ぼくたちは、その場を離れた。

後でわかったことだが、その日朝高は休みだったらしい。
ということは、朝の男も朝高の人間だったのだろう。
高校生面をして、私服を着ていたのだから。
しかし、二度もこんな目に遭うなんて、最悪な一日だった。
その後、ぼくは体格がよくなったせいか、こういう被害に遭うことはあまりなくなったが、他の生徒はけっこうやられていたようだ。
そんなふうに、ぼくの行った×高校は、女子が多いからというだけで、男子は弱いとなめられるような学校だった。
また、女子が多いというだけで、『恋愛学校』と呼ばれる学校でもあった。
posted by 新谷勝老 at 17:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 履歴書 | 編集
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック


Copyright(C) 2000-2022 しろげクラブ. All rights reserved.