2002年12月17日

履歴書 その6

さて、昨日は中学時代を書いた。
今日は当然高校時代を書くわけだが、この二つの学校の入学式前後に、どうしても忘れることの出来ない事件がある。

中学入学の2日ほど前に、ぼくは母の知り合いのUさんから入学祝いを買ってもらうことになり、Uさんの車に乗って街まで出た。
午後8時を回った頃、出かける時は小降りだった雨が、本降りになった。
「ああ、とうとう本降りになったね。急いで帰ろう」
そう言って、ぼくたちは車に乗った。
車の中で、ぼくは将来の抱負などを語っていた。
車が走り出して10分ほど経った頃だったろうか、助手席に乗っていたぼくの前に、突然黒い物体が現れた。
次の瞬間、「ドン」という音とともにその物体は宙を舞っていた。
物体は7,8メートルほど飛んだ後に地面に落ちていった。
運転していたUさんが「やった!」と叫んだ。
ぼくは何が起きたのかわからなかった。
車が急停車し、Uさんはその物体に駆け寄った。
ぼくはUさんを目で追っていった。
そこには中年の女性が倒れていた。
黒い物体は人だったのだ。
その女性は、横断歩道の数十メートル手前を、車を確認をせずに走って渡っていたのだ。
幸い意識はあった。
しかし、翌日容態が急変し、そのまま亡くなってしまった。
ぼくはUさんに悪いという気持ちでいっぱいだった。
しかし、非力なぼくにはどうすることも出来ない。
「あの街に行かなかったら・・」「1秒遅く出発していたら・・」
あの時ほど、1分1秒を悔やんだことはなかった。
さらに困ったことが起きた。
その事故の映像が目に焼き付いてしまって、その後何ヶ月も消えなかった。
目を閉じると、その映像が再現される。
そのうちに車ノイローゼになってしまい、一時は外を歩くのさえ怖かった。
ぼくが運転免許を取るのが人より遅かったのは、この事故の後遺症が残っていたからだ。

さて、高校入学の時事件である。
ぼくの家の近くに、友人が住んでいた。
彼とは保育園からずっといっしょだった。
小さい頃は気性が激しく、ぼくも何度かいじめられたことがある。
それでも、その頃はよく遊んでいたものだ。
しかし、小学生になってからは、いっしょのクラスになったことがないせいか、あまり遊ばなくなった。
そのため、中学1年に彼と同じクラスになるまで、彼がどんな性格になっているのか知らないでいた。
中学時代の彼は、えらく優しい性格になっていた。
以前とは逆で、ぼくのほうからいたずらを仕掛けることがよくあった。
それでも彼は抵抗しなかった。
1年の頃は、将棋をしたり、自転車で遠出をしたりしてよく遊んでいたが、2年、3年と別のクラスになったということもあり、彼とはあまり遊ばなくなった。
その間、彼が何を考え、どういう性格の変化があったのかは知らない。
ただ一つ、はっきりしていることがある。
彼とぼくは、同じ時期同じ人を好きになっていたということだ。
お互いそういうことは口にしたことはなかったのだが、何となく相手の仕草を見てわかった。
まあそれはいいとして、3年の2学期、彼は急に学校に来なくなった。
はっきりした理由は知らないが、噂では入院したということだった。
しかし、ぼくは彼が家にいるのを何度か目撃している。
結局、彼は卒業するまで一度も姿を見せなかった。
その後、彼がもう一度中学3年をやり直すという噂を聞いた。
ぼくがそれを聞いたのは、中学を卒業してからだった。
それから数日後のこと。
Oという友人と公園で遊んでいる時、彼が道ばたを歩いているのが見えた。
一瞬、ぼくとOは顔を見合わせた。
「声かけてみようか?」
「でも、あの噂が本当やったら、声かけるのも悪いし…」
とうとう、ぼくたちは声をかけなかった。
彼もぼくたちのそんなやりとりを察したのか、ぼくたちの視線から避けるように歩いて行った。
それが、彼を見た最後だった。
次の日、ぼくは高校に入学した。
その翌日のことだった。
学校から帰ってくると、電話が鳴った。
誰だろうと電話を取ってみると、Oからだった。
「どうした?」
「・・・、あいつが死んだ」
「えっ、嘘やろ?」
「いや、ほんと。自殺らしい。ガス管くわえて」
「・・・」
「あの時、声かければよかったのう」
「・・うん」
彼がどうして自殺を選んだのかは知らない。
まさか、2日前のことを気に病んでのことではないと思う。
いや、ないと信じたい。
では、1級下の者にいじめられたのか。
それも定かではない。
しかし、このショックは大きかった。
楽しいはずの高校生活も、このおかげで最初は全然おもしろくなかった。
彼のことを思うたびに、気分がめいってしまう。
周りで馬鹿やっている級友たちを羨ましくも思った。
結局、ぼくが高校で本領発揮するのは、それから1ヶ月後だった。
ところで、彼が住んでいた所は、現在駐車場になっている。
今でもぼくは、その前を通る時に、あの頃の暗い気分に戻ることがある。
posted by 新谷勝老 at 17:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 履歴書 | 編集
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