2022年05月22日

田んぼの中の家

 ぼくの通った小学校から少し離れた地区に、一面田んぼだらけの場所があり、そこに仲のいい友だちの家があった。
 夏の暑い日、その友だちの家の庭に巣くっていたアリジゴクを観察しに行ったり、冬の寒い日、グリコアーモンドチョコレートの懸賞賞品だった「おしゃべり九官鳥」を見せてもらいに行ったり、数々の思い出の中に、田んぼの中のその家は登場する。

 小学生の終わる頃、その友だちは引っ越してしまい、以来そこに行くことはなくなった。
 それから数年後、ぼくの行かなくなったその場所で、国道のバイパス工事が始まった。道は街を作り、街は人を呼ぶ。当然のように一面の田んぼは消され、多くの建物がその一帯を飾るようになった。そしていつしか町名も変わった。

 先日その場所を嫁さんと訪れてみたのだが、かつて通った懐かしい友だちの家はすでになく、近くには駅が出来、跡地にはグルメ本にたびたび登場する洒落たパスタの店が建っていた。
 ローマ字の「A」で始まるその店の名を、なぜかぼくは「アリジゴク」と読んでしまい、嫁さんに笑われたのだった。
posted by 新谷雅老 at 18:04 | 日記 | 編集

お客様、それはないでしょう

 某家電専門店に勤める知り合いから、こういう話を聞いた。
 初老の男性が販売員に声をかけた。
「このテレビを届けてくれ」
「ありがとうございます。では、こちらにお届け先の住所をお書き下さい」
「何で書かんとならんのか」
「えっ、配達されるんでしょ?」
「何を聞いとるんだ。そう言っとるじゃないか」
「だから、こちらにご住所をお書き下さい」
「だから、何で君に個人情報を教える必要があるんだ。ちゃんと法律で教えんでいいようになっとるだろうが」
「・・・・・・・」
「こんな非常識な店では買えん」
 そう言い捨てて、そのお客は帰ったそうだ。

 かつて、ぼくも似たような仕事をしていたことがあるのだが、その頃、こういうことがあった。
「明日X時に、この商品をここに届けて下さい」
「ありがとうございます。お支払いはどうされますか?」
「代金引換にして下さい」
「かしこまりました」
 翌日X時、配送の人から連絡が入った。
「この住所、存在しないんですけど・・・」
「えっ、地図で確認して行ったんでしょ?」
「載ってないから、直接来たんですよ。住所は間違ってないでしょうね?」
 そこでそのお客が書いた販売伝票を確認したのだが、配達票と寸分の狂いもない。電話をかけてみても出ない。仕方なくお客からの連絡待ちということにしておいた。
 あれから二十年近く経つが、いまだにそのお客からの連絡はない。
posted by 新谷雅老 at 06:26 | 日記 | 編集


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