2022年05月19日

プラチナの指輪

 たとえばクリスマスだとか誕生日だとかに、ぼくは嫁さんにプレゼントをしたことがない。逆に嫁さんからプレゼントをもらったこともない。お互いそういうことが好きではないので、それはそれでいいことにしている。
 そうそう結婚記念日もそうだ。だから嫁さんは結婚記念日を曖昧にしか覚えてないのだろう。

 ところでぼくは一度だけ、そういう行事以外の日に嫁さんにプレゼントをあげたことがある。プラチナの指輪だ。
 いや、別に気取ってそんなものをあげたのではない。勤めていた店が閉店する時に、それがえらく安値で出ていたのだ。それでつい買う気になったわけだ。つまり衝動買いしたということだ。
 さて指輪を買う時に困るのが指のサイズだ。ビックリさせてやろうと思っていたから、面と向かって聞くことが出来ない。そこでプレゼントのことは伏せ、嫁さんの指の太さをけなしながら指のサイズを聞き出した。
「13号」
 その時嫁さんはそう答えた。
 翌日ぼくは13号の指輪を買い、その晩嫁さんに指輪を手渡した。ところが
「入らん」である。
「ちゃんと13号で頼んだぞ」
「えっ・・」
 指輪をもらえるなんて思ってもなかったので、嫁さんは見栄を張って「13号」と答えていたのだ。実際のサイズは15号らしい。

 15号、それがどれほどの大きさなのかはわからないが、サイズをごまかすぐらいだから、女性にとってはけっこう恥ずかしい大きさなのだろう。
「サイズを変更してもらおうか」
 と聞くと、
「少し痩せれば入るからいいよ」
 とのたまう。
「それならいいや」
 とそのままにしておいた。
 あれから10年以上経つ。いまだに嫁さんが指輪をしているのを、ぼくは見たことがない。指輪をしたことがないということは、つまり少しも痩せてないということだ。
 嫁さんは、自分の未来にも見栄を張ったわけだ。
posted by 新谷勝老 at 06:29 | 日記 | 編集

2022年05月18日

以心伝心

 昔はよく車で遠出をしていた。日帰り宮崎だとか、日帰り鹿児島だとか、北九州からだと日帰りがきつそうな場所にも、けっこう足を伸ばしていた。
 中でも好きだったのが阿蘇へのドライブで、雄大な風景を目にすると、心が洗われる思いがしたものだ。
 黒川だとか湯布院だとか、帰りに立ち寄る温泉も格別によかった。

 さて、そういうドライブをする際、曲がりくねった細い山道なんかを走ったりすることがよくあるのだが、そこで一番困るのが後続車の運転マナーだ。
 こちらとしては初めての道だから、慎重に運転している。ところが後ろに地元の車だとか、道慣れたトラックなんかがつくと、その慎重さを許してくれない。

 相手は慣れているからがんがん飛ばしている。極力よけてやってはいるのだが、何せ曲がりくねった細い道のこと、そのタイミングが実に難しい。
 その間ずっとベタ付けされているのだ。もし動物なんかが飛び出してきて、急ブレーキをかけたら確実に追突される。
 そのくらいに引っ付いているのだ。もうこうなると煽りというより暴力だ。

 そう思うと頭に来たが、事故には到ったことはない。せっかくドライブを楽しんでいるのに、その最中に事故なんかに遭うと、
いい思い出が吹っ飛んで、嫌な思い出が残ってしまうからだ。
 この大馬鹿どもが追い越せる場所まで、とにかく我慢していた。

 おそらくこのベタ付け野郎は、その間
「このへたくそが!」
 などと思っていたかもしれない。ぼくもその間、相手のことを
「車間も取れないへたくそが!」
 と思いながら運転していたのだから。
posted by 新谷勝老 at 17:52 | 日記 | 編集

遠距離恋愛

 職場に遠距離恋愛をしている女の子がいて、口を開くたびに、
「遠距離恋愛はすれ違いが多くて大変です」と言っている。
 聞くと彼氏はアメリカにいるらしく、時差がそのすれ違いを作っているということだ。
 そのことについて、時々ぼくも相談に乗ってやることがあるのだが、遠距離恋愛なんてしたことがないのでわからない部分が多い。しかも複雑な女心の相談なので無理がある。

 それはさておき、実際のところ遠距離恋愛というものは、どういうものなのだろうか。例えば『よろしく哀愁』のように、あえない時間で愛は育っていくものなのだろうか?それとも『木綿のハンカチーフ』のように、徐々に心が離れていくものなのだろうか?

 仮に『よろしく哀愁』のように愛が育ったとしても、相手に何年も待たされたりすると、愛が育ちすぎて破局ということになりかねない。しかも、これだと時間まで絡んでいるから、涙ふくハンカチ程度では、気持ちの整理がつかないだろう。

 それならいっそ『木綿のハンカチーフ』のように、遠距離になって半年くらいから徐々に気持ちが離れていってくれたほうが、ハンカチ一枚ですむわけだからいいのではないか。
 よし、今度彼女から相談を受けた時、『木綿のハンカチーフ』でも歌ってやるか。
posted by 新谷勝老 at 05:59 | 日記 | 編集

2022年05月17日

生姜

 たとえば腹が痛い時には決まってお腹が冷えていて、逆に元気な時には決まってお腹は温まっている。
 それは心も同じことで、苦しみだとか悲しみだとかを感じる時には決まって心が冷えていて、逆に喜びだとか幸せだとかを感じる時には決まって心は温まっている。というか、熱いんだ。

 たとえば夢を語る時がそうで、熱くなればなるほど人は喜びを感じるものだ。
 たとえばいい女やいい男に会った時がそうで、熱くなればなるほど人は幸せを感じるものだ。
 だから人は夢を追い続け、いい女やいい男を求め続けるのだ。それもこれも心を冷やさないためで、喜びや幸せを感じていたいからだ。つまり夢や異性は、体を温める生姜と同じなんだ。
 だからちょっと辛いんだね。
posted by 新谷勝老 at 17:54 | 日記 | 編集

遅刻の女王

 学生の頃、何度も遅刻していたから人のことをとやかくは言えないが、会社勤めをしていた頃の部下の遅刻には往生しましたわい。
 別に悪意を持って遅刻しているのではない。ちょっと変わった女子ではあるが、遅刻が悪いことはわかっているし、根が素直なので注意すれば翌日は遅刻せずにやってくる。
 とはいえ、やってくる時間がとてつもなく早い。九時半に来ればいいのに、何と七時半だ。

 おかしいなと思って聞いてみた。
「家から会社まで何時間かかるんか?」
「一時間くらい」
「じゃあ九時半に会社に着くには、何時に家を出たらいいかわかるやろ?」
「うん、六時半」
 間違ってはいない。だけど常識ではない。

 この問答で、ぼくはあることがわかった。彼女は算数が苦手だったのだ。つまり計算問題が解けないのだ。そこで
「渋滞することも頭に入れて、八時くらいに家を出たほうがいいんじゃないか?」
 とアドバイスをした。
 何で八時なのか、彼女はわからなかったようだが、彼女は素直にそれを聞き入れた。それで何とか九時半出社の遅刻は減った。
 ところが早朝会議の時だとか、時差出勤の時はまたしても遅刻するのだ。理由は同じで算数が苦手だからだ。つまり応用問題が解けないのだ。

 おそらく彼女は一生遅刻するだろう。そのことを悟ったぼくは、もう何も言いたくなかった。とはいうものの立場上言わなくてはならない。
 ということで、遅刻してない日に
「その調子だ。頑張れ」
 と言うことにした。
 だが、そう言うと翌日必ず彼女は遅刻した。その理由がふるっていた。
「頑張れと言われたので、頑張って寝た」
 頑張りすぎて寝過ごしたのだ。
posted by 新谷勝老 at 05:52 | 日記 | 編集

2022年05月16日

花の首飾り

 昭和43年はグループサウンズの絶頂期で、タイガース、テンプターズ、スパイダース、オックス、カーナビーツ、ゴールデンカップス・・・。小学5年生のぼくの目に、彼らはまぶしく映っていた。
 一番心を奪われたのは、ジュリーやピーのいたタイガースで、ファンレターなんかも送っていた。

 そのタイガースの『花の首飾り』が大ヒットした、その年の5月のことだった。母の会社の慰安会に、クレージーキャッツが来るということで、家族で見に行こうということになった。
 ところがその日は、市民会館でタイガースのコンサートがあったのだ。そこでそちらの方に行きたいと、しつこく母に頼み込んだ。
「タイガースのどこがいいんね。どうせ市民会館に集まるのは、ミーちゃんハーちゃんばかりやないね。クレージーでいいやろう」
 結局母に振り切られ、渋々クレージーを見に行った。

 植木等がステージの上で、『スーダラ節』を唄っている。ぼくはそれを打ち消しながら、心の中で『花の首飾り』を唄っていた。
posted by 新谷勝老 at 16:16 | 日記 | 編集

カメレオン

 会社の帰りにスーパーに寄ったら、見ず知らずの人から、
「納豆はどこですか?」と聞かれた。
「店の人間ではないですよ」と言うと、
「あっすいません」と言って、その人は向こうに行った。

 こういうことはよくあることで、電気屋でラジカセの説明を求められたり、書店のコミックコーナーで宗教書のありかを尋ねられたり、銀行のATM前で機械が壊れていると文句を言われたり、初めて行ったスナックでマスターと呼ばれたり、通りがかりの葬儀屋の前で葬儀の時間を聞かれたりする。
 これはきっと、ぼくの風貌がカメレオンのごとく、その場に溶け込んでしまうせいだろう。

 だが、お役所、税務署、学校などでは、その能力は発揮されないようで、一度も声をかけられたことはない。それはきっと、そこが自分の興味のない場所だからなのだろう。
 しかし、その解釈でいけば、ぼくは葬儀に興味を持っているということになるわけか。
 案外心のどこかに、そういうものへの憧れがあるのかも知れないな。ちょっと複雑な気分だ。
posted by 新谷勝老 at 06:02 | 日記 | 編集

2022年05月15日

沖縄ベイブルー(4)

 しかしそのことで、ぼくは沖縄を嫌いにはならなかった。あの晩のことを除いては、いい思い出ばかりだったからだ。最初に言ったとおり、風土も匂いもぼくに合っている。
「今度来る時は、民謡酒場のある場所をちゃんとチェックしておこう。そこ以外には絶対行かん」
 そのことを肝に銘じた。

 さて翌年、前年と同じく社員旅行は沖縄だった。
「今度こそ民謡酒場に行くぞ」、と意気込んで那覇の街に出た。その時は5人で行動した。
 那覇港にあるステーキを食べに行って、いよいよ松山の民謡酒場に行くことになった。しかし、場所がはっきりしない。1時間ほど探したが、それらしき店は見当たらない。

「もう時間がないけ、他のところに行こうや」と一人が言った。
 ぼくも民謡酒場に未練は残ったが、こうやっていても埒が明かないので、その意見に従った。
「じゃあ、どこに行こうか?」
 すると、一人の後輩が
「さっき、いい所がありましたよ」と言った。
 じゃあ、そこに行こう、ということになった。

 後輩はさっさと先頭を歩き、ある店の前で止まった。
「ここです」
 唖然とした。ぼくらは後輩に文句を言った。
「お前、沖縄に来てまで、こんな所に来んでもいいやろ。小倉で見ればいいやないか」
「いいじゃないですか。時間もないことだし。付き合ってくださいよ」
 後輩の言うとおり、時間がない。しかたないので、後輩に付き合うことにした。
 その店の看板には、『本番、まな板ショー』と書いてあった。そこはどこにでもあるストリップ小屋だった。

 翌年の社員旅行も沖縄だった。夜になり、何人かの人が「しんちゃん、遊びに行こうや」と誘いに来た。しかし、二年連続で後味の悪い思いをしているぼくは、夜の沖縄には行く気がしなかった。
「行かん」と言って、すべて断った。
 夜は寝るためにあるものだ。それを沖縄旅行は教えてくれたのだった。
posted by 新谷勝老 at 16:43 | 日記 | 編集

ワードプレイス

 こうやって毎日ここに文章を書いている。最初は大雑把な文章を書いていたのだが、いつしか細かな言葉を追うようになった。つまりナンバープレイスの数字を探すように、神経を尖らせて言葉を探しているわけだ。

 そのことに気づいてからぼくは、ここに文章を書くこの場を、ナンバープレイスに引っかけて、ワードプレイスと呼んでいる。

 このワードプレイスは、一列一行九マスにひとつの数字しか入れられないナンバープレイスと違って、同じ言葉を何度使ってもかまわないのだから、ナンバープレイスよりはずっと楽なはずだ。
 ところがなかなか理屈通りにはいかない。一列一行九マスの縛りがないということは、決まった答がないということで、これが実に難しい。

 ぼくはこのワードプレイスというパズルの、答なき答を求めるために、日夜頭を悩ませている。
posted by 新谷勝老 at 06:22 | 日記 | 編集

2022年05月14日

夜は寝るためにあるものだ(3)

 部屋に入ると、ホステスが口を開いた。
「あの店、こういうシステムになってるの。ごめんね。それで、3万円なんだけど」
「そんな金ない」
「今日じゃなくていいよ。何なら明日、泊まってるホテルに取りに行ってもいいから」
「ホテルに帰っても、そんな金はない」
「じゃあ2万円でいいからさあ」
「しつこいねえ。ないもんはないんたい!!」

 ぼくがかなり頭に来ていると気づいて、ホステスは困った顔をした。ちょうどその時電話がかかった。
「ちょ、ちょっと待ってね」とホステスは電話に出た。
 どうやら仲間からの電話のようだった。方言、つまりウチナーグチでしゃべっているので、こちらはなんと言っているかわからなかった。おそらく、
「こいつ、金持ってないみたい」とでも言っていたのだろう。

 しばらく電話でやりとりしていたが、突然「お友だちよ」と言って、受話器をぼくに渡した。受話器の向こうはGさんだった。
「しんちゃーん、どうしょうか。おれ金ないよー」
「おれもないけど。もし金があってもせんよ」
「出ると?」
「当たり前やん」
 ぼくは受話器を置いた。
「お友だち、何だって?」
「あんたに関係ないやろ」
「ね、どうする?」
「帰る!」
 ぼくはそう言うと、ホテル代を置いて外に出た。

「さて、どうしようか」と思っていると、Gさんが出てきた。続いてKさんも出てきた。
 二人とも口々に、
「冗談じゃない。小倉のソープだって、1万5千円も出せば充分のに。ボリすぎやのう」などと言っている。二人はどうもやりたかったようだ。
「だから、松山に行こうと言ったやろ」とぼくが言うと、二人は黙っていた。

 その時、雨が降り出した。スコールである。もちろんぼくたちは傘を持ってない。しかし、雨宿りする場所もなく、歩いて宿舎に帰ることにした。
 暗くてよくわからなかったが、ぼくたちが歩いている所は、どうやらソープ街らしかった。歩いている途中に、何度か声をかけられた。
「3人さん、いい子いますよー」
 怒りの収まらないぼくは、大声で怒鳴った。
「うすさい、黙っとけ。お前に用はないんたい!!」
 びしょ濡れだったし、かなりすごい形相だったのだろう。それまで威勢のよかった呼び込みのヤンキー風兄ちゃんは、急に声を落とし「すいません」と言った。

 ホテルに帰ってから、ぼくたちはそのことをみんなに話した。
「この辺のタクシーはグルみたいやけ、気をつけとったほうがいい」
 そんな話をしているところに、Sという男が帰ってきた。ぼくが、
「そういえば、お前もあの店におったのう。あれからどうしたんか」と言うと、Sはニヤニヤ笑うだけで、何も答えなかった。
「ふーん、そうなんか。やっちゃいましたか。お前はバカか」
 その後、ぼくはSを見るたびに、「お前、病気もらってない?」と言うようになった。Sはその話をすると、いつもニヤニヤしていた。よほどいい思いをしたのだろう。

 この旅行の帰り、那覇空港に行くバスの中で、またその店の話が出た。
「その店どこにあるんね?」
「知らん。タクシーが勝手に連れて行ったんやけ」
 そんな話をしていると、バスがある店の前で止まった。
「お土産買う人は、ここで買って下さい」とガイドさんが言った。
 お土産屋の前に見覚えのある店が見えた。その店の名前を見ると、『XXX』と書いている。
「あの店の名前『XXX』やなかったか?」
「そういえば」
「おい、あの店、あの店。あれが例の店」
 場所は那覇港の近くだった。ということは、初日に泊まったホテルのすぐ近くじゃないか。
「タクシーの奴、こちらが知らんと思って、遠回りしたんか」
 そう思うと、また頭にきた。
posted by 新谷勝老 at 16:01 | 日記 | 編集

気になる言葉

(1)
 最近気になる言葉があって、それがことあるごとにぼくの頭の中をよぎっていく。どんな言葉なのかというと、「ゆっくり、ゆっくり」だ。
 どういう意図があって、こういう言葉がよぎるのだろう?焦っている自分を戒めているのだろうか。
 そういえば、その言葉が頭の中をよぎる時は、決まって緊張感が漂っているような気がする。

 しかし気になる。ということで、今日それが何を意味しているのかを確かめる実験をやってみた。
「ゆっくり、ゆっくり」を行動に移してみたのだ。つまり、すべてのことをゆっくりやってみたわけだ。
 歩くのもゆっくり、動作もゆっくり、考え事もゆっくりである。すると、面白い結果が出た。

 歩いている時のことだが、ゆっくりを実践していると、不思議と信号などに引っかからないことがわかった。信号にさしかかった時にタイミングよく青になって、待たなくてすんだり、信号のないところでも、道路を渡ろうとすると、車がまったく走ってなかったりした。つまり、すべてが順調に流れたわけだ。

 そういうふうにやっていくと、仮に信号で引っかかったとしても、「この流れに意図があるので引っかかったんだ」とか、「ちょっと焦っていたんだ」などと思って、そのことに腹を立てたり、落胆したりということがなくなるだろう。

 運というのはタイミングだと聞くが、もしかしたら、この「ゆっくり、ゆっくり」の呼吸が、ぼくの幸運のタイミングなのかもしれない。
 きっと神とか宇宙意識とかいうものが、それを教えてくれたのだろう。

(2)
 昔、本で読んだのだが、ある武士が殿様から「霊験あらたかな金言を探してこい」と命じられ、諸国を巡る話があった。
 長い時間をかけて探したあげくに、ようやく武士はその金言を見つけた。その金言とは
「待ったり、待ったり」だった。

 さて、その言葉を見つけ、久しぶりに我が家に戻った彼は、家の窓に不審な影を見た。妻一人しかいないはずの家の中に、もうひとつの影があるのだ。それはどう見ても男の影で、二人は仲むつまじく寄り添っているではないか。

 カッと来た武士は、刀を抜いて家の中に飛び込もうとした。その時だった。彼は例の金言を思い出したのだ。
「待ったり、待ったり」
 さっそく、それを実践してみることにした。

 ひと呼吸置き、心を落ち着けてから家の中に入ってみると、そこにいたのは妻の父親だった。自分が長いこと家を空けて帰ってこないので、心配して様子を見に来ていたらしい。
「待ったり、待ったり」のおかげで、大事に至らずにすんだというわけだ。
posted by 新谷勝老 at 06:29 | 日記 | 編集


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