吹く風ねっと

一生は未来の記憶を散りばめた一本の道。人生は未来の記憶をひろいながら歩く旅。

2017年05月

若かった頃に、ある人のことを
すごく好きだった一日があって
その一日が現在を形作っている

昔からあまり良くなかった歯を
一気に治療したのが十数年前で
ほぼすべての歯に手が加えられ
一部は人工の歯に取替えられた。
つまりサイボーグになったのだ。

以来、その歯を点検するために
年一、二回歯医者に通っている。
歯科医はギルモア博士よろしく
設計図とぼくのパーツを見比べ
点検しながら修理していくのだ。

最近サイボーグ化された奥歯を
噛みしめるとカチッと音がする。
もしや加速スイッチではないか
と期待したが、速くは動けない。
ぼくは戦士ではなかったようだ。

中国の兵法に郷間という言葉がある
敵国民を使ったスパイ活動のことだ。
敵国民を利用し情報を集めてみたり
敵国民を煽動してデモをやらせたり
時には内紛や革命を起させてみたり。
煽られた国民は国のために良かれと
思っている愛国者だから始末が悪い。
愛国者の頑張りで国が滅亡するのだ。

時々変な主張をしているデモを見る。
おかしな日本語のプラカードを掲げ
列をなすデモ隊の人たちは、きっと
敵国のスパイ活動に利用されている
真面目で間抜けな愛国者に違いない。

夕方になると、ぼくは無意識に
石炭の煙のにおいを探している。
昔はどの家も風呂を沸かすのに
石炭を用いていたので、辺りは
石炭の煙のにおいで溢れていた。
おかげでぼくの夕方のにおいが
石炭の煙になってしまったのだ。

風呂が電気やガスになった現在
家のまわりは毎日夕方になると
必ず焼肉のにおいが漂っている。
ということは周辺の子供たちの
夕方のにおいは焼肉になるのか。
そして将来、夕方には無意識に
焼肉のにおいを探すのだろうか。

中学二年の三学期に、ぼくは一度だけ
坊主頭にしたことがある。その中学は
規則付きではあるが長髪自由だったし
運動部に入っているのでもなかったし
無理に坊主にする理由はなかったのだ。
が、なぜか急に思い立って友人と二人
床屋に飛び込んで髪を刈ってしまった。

まわりの評判はいいものではなかった。
知合いに会うたび笑われたものだった。
額が狭くて、そのすぐ上に旋毛のある
ぼくの頭は元々坊主が似合わないのだ。
さらに初めての坊主なので寒かったし。
坊主頭は一度限りで終わってしまった。
笑われると嫌なので写真も撮ってない。

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