吹く風ねっと

一生は未来の記憶を散りばめた一本の道。人生は未来の記憶をひろいながら歩く旅。

2016年03月

最近は影を見たことがないのです。
自分の影を見た記憶がないのです。
影が現れないわけではありません。
影はちゃんとぼくに寄添っていて、
ぼくが動くとおりに動いています。
なのにぼくに影が見えない理由は、
あまりに影が当り前すぎるために
影に心が転がらなくなったからで。
あまりにぼくの近くにいるために
意識するのが面倒になったからで。
更には影見る時間を惜しむからで。
最近は影を見たことがないのです。
自分の影を見た記憶がないのです。

中学に入学した頃に、自転車で
友人と遠出をしたことがあった。
行きたい場所があるという彼と
学校で待ち合せて出かけたのだ。

確か連休前の日曜だったと思う。
毎日のように買い食いしている
学校近くの駄菓子屋がその日は
閉まっていた。家の近くにある
駄菓子屋が年中開いているので
休んでいる駄菓子屋を見るのは
生れて初めてのことだったのだ。
それで興奮してしまって、つい
「この駄菓子屋休んどるぞ」と
ぼくは友人に言った。ところが
友人はまったく興味を示さない。
黙り込んでペダルをこいでいる。

そういえば彼はぼくに行き先も
告げずに必死に先を急いでいる。
何か変だなと思いつつ、ぼくは
必死な彼を必死に追っていった。

何よりも大切なことは、これも大丈夫、
あれだって大丈夫ということなんです。
いいことはもちろん、悪いことだって
いやな顔をしてやっては来るんだけど
実は仮の姿で、大丈夫の化身なんです。
つまり遅かれ早かれ大丈夫ということ、
だから何も気にすることはありません。
すべてのことを大丈夫だと信じきって
すべてのことを大丈夫にまかせきって
力いっぱい精いっぱい、夢に向かって
この人生を歩んでいけばいいんですよ。

久しぶりに小さなこの街に
ぼくはやって来たんだけど
何か以前より白くなったな。
確かにビルが建ったりして
街並は変っているんだけど
そんな景観などではなくて、
公害の影響などでもなくて、
この街から伝わる空気がさ
やたらと白く感じるんだよ。
数年前にもそう思ったけど
今回の白さは格別に思える。
人間の生活空間というのは
やっぱり霞んでいくのかな。

いや、ちゃんとわかってますから
きっときっとやってくれますから
彼らも同じ日本の子なんですから
盆おどりだって、おみこしだって
この地を守ってきたご先祖さまの
行動や夢や考え方やその生き方が
彼らが受継いだ遺伝子のどこかに
間違いなく眠っているんですから
今外国の祭りにかぶれていたって
その時になればここに戻ってきて
きっと故郷を演出してくれまずよ
ちゃんと日本を見せてくれますよ

アルバイトで働いている
男子大学生の大谷くんの
身長は185㎝だそうだ。
もうひとりのアルバイト
女子短大生の小山さんの
身長は145㎝だそうだ。
二人の身長差は40㎝だ。
ところがこの大小の二人
横に並んで立っていると
大谷くんの背丈はなぜか
小山さんの倍あるように
ぼくには見えてしまう。

ヤツらは知ってたんだよ
きみがうしろにかくれて
鼻血を拭いていたのをね。
だけど誰もきみのことを
からかわなかっただろう?
『はなぢ』なんて渾名も
付けられなかっただろう?
あれだけ揚足を取るのが
大好きなヤツらなのにね。

それはあの鼻血の理由を
知っていたからなんだよ。
あの日あの教室にいたの
男子生徒だけだったよね。
あの年頃の男子ならみな
経験していることだから
もしきみを馬鹿にしたら
いずれ自分にも跳返って
くるかもしれないんだね。
計算高い連中だったから
それを怖れたんだろうね。

これもまた恋の歌なのかと
好きですの繰返しなのかと
過去の記憶を甦らせながら
うんざりうんざりしながら
この歌の成行きを見ている
この恋の行く末を見ている

十九歳の朝の空は曇っていた。
来る日も来る日も曇っていた。
なにもすることのないぼくは
ラジカセのスイッチを押して
ボブ・ディランを聞いていた。
毎日同じことをしていたので
いつしかテープは間延びして
レコードの中のディランとは
趣きの違うものになっていた。

そうなんです。ぼくは
神頼みのファンだから
腕の脈拍ひとつひとつ
吐く息のひとつひとつ
体の動きひとつひとつ
見える影ひとつひとつ
聞える音ひとつひとつ
においのひとつひとつ
味わいのひとつひとつ
感じる事ひとつひとつ
経験したひとつひとつ
体験するひとつひとつ
未知の事ひとつひとつ
ぼくは分け隔てせずに
手を合わせるんですよ。

春十五度。昨夜着ていた
ぶ厚く重い上着を脱いで
軽めのパーカーを羽織る
心も体も浮かれる十五度

春十五度。お酒でいうと
日本酒くらいの度数かな
ほろ酔い気分で街を歩く
ふらつきながらの十五度

春十五度。これが坂道の
上り傾斜の度数であれば
かなりきついし汗ばむし
疲労度数が一気に十五度

春十五度。その風吹けば
暖かく心うごめく十五度
秋十五度。その風吹けば
肌寒くもの悲しい十五度

このページのトップヘ