吹く風ねっと

一生は未来の記憶を散りばめた一本の道。人生は未来の記憶をひろいながら歩く旅。

2012年02月

今日は無い日ということで
よろしいでしょうか?
だって実は有る日なんだけど
実際使われて無いんですから。

義母は今年八十八歳なんだけど
実は今日二月二十九日の生まれで
実際の年齢は二十二歳だ。
それでは都合が悪いということで
誕生日を三月にずらしたらしい。
おそらくこの日生まれの人は
そういう人が多いのではないだろうか。
だって老人面した二十代なんて
見たことも聞いたこともないからだ。
ということは今日は誰にも誕生日に
使用されない日ということになる。
それならいっそ二月二十九日をやめて
例えば(閏)二月二十八日にするとか。
それなら誕生日をごまかすこともなく
毎年正しい誕生日で祝うことが出来る。

今日は無い日ということで
よろしいでしょうか?
だって実は有る日なんだけど
実際使われて無いんですから。

かつて、唯一の道路が
線路にさえぎられているせいで
人の往来がそこで止まっている
まるで窒息しそうな町があった。
最近その線路の向こう側に
大きなスーパーが建ち
そこを中心として
新しい町が出来た。
古い町と新しい町の間には
けっこう大きな橋がかかり、
二つの町はつながった。
古い町は何とか
窒息せずにすんだのだった。
その後古い町と新しい町は
手を取りあい、時には
互いの町を助け合い
とうとう一つの町になった。
今はかなり大きな町に
成長しているようだ。

三十数年後には
エレベーターに乗って
宇宙に行くことが出来るらしい。
その頃ぼくは九十歳前後だが
これは是が非でも体験したい。
そして日記に書き留めたい。
とりあえずそれまでは
この世にいることにしよう。
ということでこれから
生活習慣を変えるぞ。
毎食腹八分目を心がけ
毎日納豆を食ってやるんだ。

チャリチャリ、チャリチャリ
ラーメン屋の鍵が開く。
ガラガラ、ガラガラ
ラーメン屋の戸が開く。
モワモワ、モワモワ
豚骨のにおいが広がる。
ゾロゾロ、ゾロゾロ
お客が並び始める
カチカチ、カチカチ
ああもうすぐ昼になる。
そろそろ、そろそろ
ラーメン屋開店である。

ぼくが居眠りしている時の話。
久しく顔を見てない人と出会った。
一見慌てているようにも見えたが
しきりにこちらに手を振っているので
少しは気持ちに余裕があるようだ。
「こんにちは、お元気ですか?」
そうぼくが口に出そうとした時
その人は忽然と消えてしまった。

これはもちろん夢なのだろう。
こちらは居眠りしているわけだし
いや絶対に夢に決まっている。
ところでこういう場合、いったい
相手は何をしているのだろう。
彼も居眠りしていて、実はぼくと
夢通信しているのかもしれない。
今その人のことが気になっている。

この言葉を伝えたくて
ぼくは虫けらになって
あなたの家へ出かけたのです。
だけど所詮は地を這う虫けら
あなたの家は遠すぎたのです。
そのせいでぼくは力尽き
日干しになってしまったのです。
ぼくはこの言葉をあなたに
伝えたかっただけでなのです。
それだけで充分だったのです。
だからあなたの家に行くなんて
最初は考えてなかったのです。
だから日干しになるなんて
まったく予定にはなかったのです。

この霊性のないカラカラの
この日干しの体もいずれは
風に吹き飛ばされるでしょう。
そして粉々になるでしょう。
あなたへ伝えるこの言葉も
もう意味を持たないものに
なっていることでしょうね。

列車は休むことなく入ってきて
毎日毎日時間通りに発車する。
行き先は著名な温泉地だから
旅館の心配をすることもない。
あとはこちらの都合さえつけば
思い出がひとつ作れるのだ。
いつもぼくらはそのために
寒さや暑さに耐えながら
三連休や四連休を作ろうと
必死になって頑張っている。
だけど望みがかなうことは
なぜか滅多とないものだ。
理由はいろいろあるのだが
あくまでもそれは言い訳で
本当の理由は一つしかない。
旅立つ勇気を持てないからだ。

1,
今年がとてもとても寒いのは
体を絞ったせいもあるのだろう。
そう考えると寒さも辛くはない。
どちらかというと喜ばしい。

2,
脳の中がえらく暇だ。
いらんことを考えるくらいに
終わったことを繰り返すくらいに
暇を持て余している。

3,
世の中大丈夫シャワーが溢れている。
だけど誰もそれを気づこうとせずに、
相も変わらず不安ばかり追っている。

4,
嫌だなとか、憂鬱だなとか、
そういう思いの後には
意外にいいことが待っているものだ。
前の思いに振り回されて
なかなか気づくことはないけれど
意外にいいことが待っているものだ。
だから嫌な気持ちになっても
だから憂鬱な気分になっても
気にすることはない。

5,
同窓会、次会う時は、おばさんだ

あの日は雨が降っていた。
字足らずのスーツを着て
字余りのコートを羽織って
ぼくはこの町を出たんだ。
この町の何もかもが古く思え
見知らぬ新しい町を求めて
ぼくはあの日旅立ったんだ。

数年してぼくはわかった。
町に新しいも古いもないってね。
決して古くなかったんだ。
ただ自分の中にあるこの町が
古く存在していただけなんだ。
だからぼくはこの町に戻ってきた。
そして今もこの町に住んでいる。

さようなら、さようなら
今日でぼくたちは卒業だ。
ここまで付き合いのなかった人や
同じ進路を歩まない人とは
とりあえずこれでお別れだ。
この先会うこともないだろう。
特にクラスの違う女子たちとは
二度と会わないに違いない。
もし人生のどこかで彼女たちと
すれ違うことがあったとしても
その時はおばさんのはずから
気づかないまま過ぎ去るだろう。
さようなら、さようなら
今日でぼくたちは卒業だ。

1973年。ぼくは高校一年だった。
この年の冬は寒かった憶えがある。
凍結した坂道で思いっきり横転し、
冷たい道の上に叩きつけられたことも
粉雪混じりバス停で痛みすら感じながら
じっとバスを待っていたことも、
好きな女の子にふられた夜
吹きざらしの街を一人歩いて帰ったことも、
その年の主な思い出はみな冬のものだ。
おまけにオイルショックがあったりして
個人の事だけでなく世の中も寒かった。

そういえばその年一番売れたレコードは
井上陽水の『氷の世界』だったな。
あのレコードの持つイメージは
アルバムのタイトル通り冬だ。
中に春や夏の歌もあるけど
アルバム全体を冬の雲が覆っている。
その年ぼくはそのレコードを
何度も何度も聴いたものだった。
ぼくが'73年を寒く憶えているのは
もしかしたらあの陽水のアルバムに
感化されているからかもしれない。

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