吹く風ねっと

一生は未来の記憶を散りばめた一本の道。人生は未来の記憶をひろいながら歩く旅。

2011年07月

さほど暑くないこの夏を
充分に鳴き尽くしたセミが
マンション脇の駐車場で
ジージーのたうち回っている。
そんなに日焼けした堅い堅い
アスファルトの上ではなく
せめて柔らかな土の上で
最期の時を迎えろと
ぼくは申し訳程度にある
玄関横の芝生の上に
彼をそっと運んでやった。

例えば夢を見た時、
自分に都合のいいように
解釈すると
自分に都合のいいことが
起きてくるものだ。
だからぼくは、
それが占いではどんなに
不吉な夢であったとしても
そんなことには一切触れず
自分に都合のいいように
解釈している。
手相だって、名前だって、
最近はそうしている。
それでうまくいっている。

先祖に小学校の校長先生がいたというのが
うちの一族の自慢で
小さい頃からよく聞かされていたものだ。
現行の校長先生というのは
そこまで価値を持たないかも知れないが
その先祖の活躍した時代は明治だ。
しかもその小学校の初代校長であったと言うから
その価値は計り知れないものがある。

ところが社会に出てから
その手の話を至る所で聞くことになった。
実際同じ職場で働く人の中にも二人ほどいた。
で、その人たちは親戚なのかというとそうではなく
まったく血のつながりのない他人なのだ。
そういうことがあって以来、校長先生話は
ぼくの中では眉唾物だという結論に達していた。

しかしそれが事実だということを
近年知ることになる。
実はその小学校というのが嫁さんの通った学校で
確かに初代の校長先生はうちの一族の姓で
その人の出身地もうちの一族の住む町だったという。
ということで、ぼくの先祖の校長先生は
再び一族の自慢の種となったわけだ。

夏休みの楽しみの一つに
病院通いがあった。
別に大病をしていたわけではない。
夏休みを利用して歯や目や鼻などで
悪くなっているところを
治療しましょう、というやつだ。
歯に関しては痛みを伴うので
行くことは滅多になかったが、
目や鼻の治療は痛みも伴わないし
何よりもバスに乗って
街に出る楽しみがあったので
積極的に通っていたものだ。
そういえば病院帰りに
クーラーのビンビン効いている
デパートや本屋の中に入って
涼む楽しみもあったな。

夏が冷めた頃の
海の色が好きだ。
さしてきれいな
海ではなくても、
時にエメラルドな色を
目に触れさせてくれる。
空は高く、風は凪ぎ、
軽く寄せてくる波も
夏が冷めた心には
実に心地がいいものだ。

黄色い街灯や
黄色の点滅信号が
二重に見え出すと
ぼくの視力は冴えてくる。
見えないものまで
見えるような勢いだ。
そこに到ると夜空の星は
雪のような結晶と化し
地球上に降ってくる。
この世の向こう側にある
闇の世界まで見えてきて
そのうち宇宙の実相にまで
たどり着くだろう。

とうとうアナログ放送
停波の日がやって来た。
正午になると画面は青一色になり
今日が終わった時点で地アナは
砂の嵐状態になるのだそうだ。
この世紀の瞬間を見逃してなるものか。
ぼくは今日テレビに
必死にかじりつくつもりだ。

1,
ほら鳴っているんです、
ほら鳴っているんです、
明日に向かう夜汽車の音が。
「おーい、おーい」っと
ぼくに呼びかけるように
ぼくに誘いかけるように
鳴っているんです、
そして鳴っているんです、
今でも鳴っているんです。

2,
昨日は久しぶりに
金縛りにあった。
耳鳴りがして
ジワーッとぼくの胸を
押さえつけてくる。
そしてぼくの魂を
追い出そうとする。
昨夜は足を持ち上げられ
宙吊りになったのだった。

時代がない、過去がない、
今がない、明日がない、
夢がない、希望がない、
愛がない、心がない、
光がない、影がない、
風がない、水がない、
花がない、月がない、
闇がない、星がない、
春がない、夏がない、
秋がない、冬がない、
政治がない、法律がない、
規則がない、規律がない、
挨拶がない、気持ちがない、
ドラマがない、歌がない、
面白くない、時代がない。

柔道をやっていたのは
もう三十数年前の話で、
それ以来ぼくは
柔道着に手を通していない。
ということでぼくの中で柔道は
すでに終わっている話だ。
ところが最近になってぼくは
その柔道の技の一つである、
空気投げの理屈がわかってきた。
今後柔道をやるわけでもなく
そんな理屈がわかっても
今さらどうしようもないのだが、
それでもなぜか心のどこかで
そのことをぼくは喜んでいる。

朝方ぼくは飛び起きてしまった。
どこからとなくマグマ大使を呼ぶ
笛の音が聞こえてきたからだ。
地球のどこかで何か
起きているのかもしれない。
宇宙からの侵略者が
やってきたのかもしれない。
そこまで大規模なことでは
ないのかもしれない。
いろいろな想像の群たちが
頭の中を侵略してくる。
だってこの世の中には
それはもう地球規模単位で
人間モドキがいるわけだから。

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