吹く風ねっと

一生は未来の記憶を散りばめた一本の道。人生は未来の記憶をひろいながら歩く旅。

2008年02月

休みの日には妻といっしょに
温泉に浸って買い物に行って
食事を済ませて家に帰る
費やす時間は四時間ちょっと
移動距離は十キロ足らず
週一回の楽しみだ

世の中の「この野郎!」を絵筆に伝え
彼の腕は一気にキャンパスの上を這った
ひとつの心は無数の色を呼び
無数の色はあまねく魂を呼ぶ
長い時間をかけた作品だと聞く
だけど彼にとっては
ほんの一瞬の出来事だったのだろう

年老いた枯れ木は静かに息を引き取った。
ぼくはその過程を眺めながらも、
一筋の涙さえ流さなかった。
雨の降るやけに温かい一日だった。

その日ぼくは職を探して奔走していた。
ちょうど余った時間を弄んでいた時に、
なぜかその日に何かが起きるような、
気がしていた。

それから数時間経った頃だった。
今では当たり前の出来事になっている、
「いつか通る避けられない道」というものが、
生まれて初めて現実になった。

年老いた夢は立ち上る煙の中で、
何かをふり返っていた。
何かをふり返りながら、
そこから逃げだすことをしなかった。

タバコをくわえた冷たい骸は、
灰と化してぼくらの前に現れた。
ぼくは人生のむなしさも感じずに、
そこにある骨を一つ一つ拾い上げていった。

「悩みなんて泡のようなものだから、
いつか消えていくものだから、
何も気にすることはないんだよ」
よくそんなことを言われる。
実はその時のぼくは
そのことについて悩んでいるのではなく、
「そのことを悩まないようにしよう、
そのことを気にしないようにしよう」
などと思い、
自分の心と格闘しているんだ。
その格闘が心を疲れさせてしまい、
心の中を面白くないものにしてしまう。
結局そういうことが悩みに繋がっていくわけだ。
もしかしたら素直に悩むことのほうが、
心の格闘をするよりも気が楽なのかもしれないな。
加えて「この悩みは楽しい展開への布石なんだ」
などと思うことができたなら、
もっと違った人生を味わえるかもしれないな。

そこには小さな川が流れていた。
誰もが渡ろうとするのだけど、
誰一人渡った者がいない。
様々な人が、
この川の岸までは来るのだけど、
そこから先に進もうとしない。
誰かが一歩を踏み出すのを、
誰もが待っているのだ。
向こう岸のことを、
誰もが知っているのだけど、
誰一人渡った者がいない。
そこはありふれた、
曇り空の続く、
ただの工場街であることは
知っているのだけど、
誰一人渡った者がいない。
気まぐれに、
すべての人が、
この岸に集まるのだけれど、
誰一人渡った者がいない。
曇天の風景は、
誰もが知っているのだけれど、
誰一人渡った者がいない。

工事中の泥道を
汚れないようにと気をつけながら、
小さな町に入っていった。
この町には、
大きな門のある
洒落た家が一軒と、
低い塀に囲まれた
古ぼけたアパートが一棟あるだけで、
他に何があるわけではない。
この先は山へと続くのだが、
この二つの建物のために
大字がここだけ消される。
市はこの二つの建物のために、
区画整理して町名を付けたのだ。

ここに来るためには、
年中工事中の泥道を
通らなければならない。
何のための工事なのか
誰も知らない。
ここの住人以外は
滅多に人の通わぬ町である。
ただ、この二つの建物に行くために
工事中の泥道を通らなければならない。
単車に乗った郵便屋は
大いに迷惑している。

ストーブを前に見て
テレビを後ろに聴く
時々犬の鳴き声がする
二月の今日は寒い日だ
眠たくもある
イスの脚が見える
ウーロン茶の味が蘇る
灰皿が横にある
タバコでも吸おうかと思う

あまりに暑くて
目が醒めてしまった
先ほどの雷雨が
今はやんでいる
風も収まったようだ
二月も末
今日はストーブがいらない
さて、どうやって眠ろうかと
悩んではいるのだが
さて、何をやろうかと
考えてもいる

ぼくの気分はルーレット
その時々の点と点
悲しいことでも笑ってしまい
笑えることでも怒ってしまう
昨日好きでも今日は嫌い
そんなことの繰り返し
転がる球は心のようで
なかなか素直に定まらない
そんな点が積み重なれば
ひとつの影に見えてくる
影はぼくを形作って
そういう人だと見せてしまう
そういう人だと思われることが
嫌で嫌で無理をする
無理をすれば小さな球は
またコロコロと定まらない
そしていつもの繰り返し
そしていつもの繰り返し
ぼくの気分はルーレット
その時々の点と点

懲りない人は今日も面接に向かう。
しゃべりすぎを注意しながら、
今日もまたしゃべりすぎてしまった。
体面を繕ってはみるが、
いつの間にか乗せられてしまう。
頼りない人が露わになる。
悲しいかな今日も馬鹿をやっている。
馬鹿をやりながら馬鹿を否定している。
結局は馬鹿だ。
悔やむまいと思いながら、
いつの間にか悔やんでしまう。
そんな毎日。
明日も面接に向かう。

空白、空白
何も出てこない
腹の中にも何もない
憂いのない生活は
目の充血をもぬぐい去って
何もかもを白けさせてしまった
時々起こるひらめきでさえ
なぜか感動も味わえずに
消え去ってしまう
空白、空白
何もない夜に
空白、空白
慣れっこにになってしまった
怠惰、無気力、春近し

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